東京都が、豪華客船「飛鳥Ⅱ」による都民クルーズの参加者を募集しています。2027年1月6日出発の3泊4日で、四日市に寄港し、伊勢神宮への初詣などを楽しむ船旅です。
飛鳥Ⅱに乗る機会はなかなかありません。都民向けの割引で乗れるのは魅力的ですし、東京港を身近に感じてもらうという発想も良いと思います。
一方、日程は平日を3日含み、割引後の料金も1人22万円以上です。魅力的な制度ではありますが、働いている人にとっては休暇を取りにくく、参加のハードルが高い日程でもあります。
この記事では、意外と知られていない「都民クルーズ」の仕組みと今回の募集内容、制度が続けられてきた経緯を紹介します。あわせて、料金や平日を含む日程から、実際の参加しやすさも考えます。
飛鳥Ⅱ「旅はじめ四日市クルーズ」の概要
今回のクルーズは、東京都の「令和8年度第5回都民クルーズ」として募集されています。飛鳥Ⅱで東京港を出発し、三重県の四日市に寄港して東京へ戻る3泊4日の旅です。
| 日程 | 行程 |
|---|---|
| 2027年1月6日(水) | 東京国際クルーズターミナルを16時30分に出港 |
| 1月7日(木) | 四日市に9時着、19時発。自由行動、別料金の観光ツアーあり |
| 1月8日(金) | 終日航海 |
| 1月9日(土) | 東京港に8時30分着、下船後解散 |
船内では「飛鳥初春会席」が予定され、四日市では伊勢神宮への初詣などを楽しめます。食事は朝食3回、昼食2回、夕食3回です。最少催行人数は1人で、添乗員は同行しませんが、船内では係員の案内があります。
一度は乗ってみたい「飛鳥Ⅱ」とは
飛鳥Ⅱは、郵船クルーズが運航する日本船籍のクルーズ客船です。2006年に就航し、全長241メートル、総トン数50,444トン。乗客定員872人に対して、乗組員は約490人です。巨大な外国客船とは異なり、乗客数を抑えた船内で、日本語による案内ときめ細かなサービスを受けられることが魅力です。
客室は全436室が海側にあり、すべての客室に海を望む窓とバスタブ付きの浴室があります。今回募集されるD・Eバルコニーには専用バルコニーがあり、Fステートにも窓があります。朝起きて海を眺めたり、入港や出港の景色を自分の客室から楽しんだりできるのは、船旅ならではです。
海を眺めながら過ごす露天風呂と船内施設
飛鳥Ⅱには、大海原を眺められる露天風呂があります。ホテルの大浴場とも温泉旅館とも違い、航海する船の上で海と空を眺めながら湯船につかれるのは、飛鳥Ⅱに乗る大きな楽しみの一つです。
船内にはフィットネスセンターのほか、1周440メートルのプロムナードデッキもあります。海風を感じながら歩けば、食事を楽しんだ後の軽い運動にもなります。和室、ライブラリー、カードルーム、麻雀サロンなどもあり、静かに過ごしたい人にも選択肢があります。
食事、ショー、映画を楽しみながら一日を過ごせる
クルーズ旅行では、寄港地だけでなく船内で過ごす時間そのものが旅の目的になります。飛鳥Ⅱには、優雅なダイニングルーム、ビュッフェスタイルのレストラン、カフェ、バーやラウンジが用意されています。今回のクルーズでは、新年らしい「飛鳥初春会席」も楽しめます。
夜にはプロダクションショーや生演奏などが行われ、映画を鑑賞できるハリウッドシアターもあります。日中には講演や体験教室などが開催されることもあります。ラウンジで海を眺めたり、図書室で本を読んだり、船内を散策したりと、その日の気分に合わせて過ごせます。
今回の日程には、どこにも寄港しない「終日航海日」が1日あります。初めてクルーズに乗る人は「一日中、船の中で退屈しないのか」と思うかもしれません。しかし飛鳥Ⅱでは、食事やショー、入浴、散策などを楽しんでいるうちに一日が過ぎていきます。むしろ、観光地を忙しく回らず、時間を気にせず船内で過ごせることがクルーズの魅力です。
東京の港から荷物を持って乗船すれば、客室を移動せずに四日市まで行き、再び東京へ戻ってこられます。飛行機や鉄道を乗り継ぐ旅行とは違い、移動時間まで食事や娯楽を楽しめる点も、飛鳥Ⅱに一度は乗ってみたいと感じる理由でしょう。
都民クルーズ料金でも、1人22万円以上
今回の募集は客室ごとに室数が限られ、通常料金から25%割引とされています。ただし、料金は大人1人あたりで、2名利用時の金額です。
| 客室 | 募集室数 | 通常料金 | 都民クルーズ料金 |
|---|---|---|---|
| Aアスカスイート | 2室 | 699,000円 | 524,300円 |
| Cスイート | 5室 | 547,000円 | 410,300円 |
| Dバルコニー | 5室 | 363,000円 | 272,300円 |
| Eバルコニー | 5室 | 354,000円 | 265,500円 |
| Fステート | 5室 | 301,000円 | 225,800円 |
最も手頃なFステートでも、1人225,800円です。2人で申し込む場合、客室料金だけで451,600円になります。船内での飲み物や寄港地観光など、別料金のものを利用すれば、旅行全体の出費はさらに増えます。
通常料金よりは安くなりますが、「都民向けだから誰でも気軽に参加できる価格」とまでは言いにくそうです。割引は大きな魅力ですが、クルーズそのものが高価格帯の旅行であることは変わりません。
働いている人には、日程のハードルが高い
今回の日程で特に気になるのは、出発が水曜日で、帰港が土曜日の朝という点です。一般的な土日休みの会社員が参加する場合、水曜から金曜までの3日間、仕事を休む必要があります。
出港は水曜の16時30分ですが、乗船手続きやターミナルまでの移動を考えると、当日の勤務を終えてから乗るのは難しいでしょう。四日市に寄港する木曜日も平日です。
もちろん、有給休暇を使える人や、勤務日を調整できる人なら参加できます。しかし、年始の時期に3日間休むのは簡単ではありません。シフト勤務の人、自営業者、フリーランス、退職後の人などは日程を合わせやすい一方、平日に休みにくい会社員や子育て中の家庭には申し込みのハードルがありそうです。
制度に年齢や所得による制限はなく、都内在住または在勤であれば応募できます。ただ、価格と日程を考えると、時間と費用の両方を確保できることが参加の条件になりそうです。
都民クルーズは、いつ、なぜ始まったのか
都民クルーズは、今回新しく始まった制度ではありません。東京都の過去の資料をたどると、少なくとも2006年度には、東京都が低廉な価格で都民にクルーズへ参加してもらう取り組みを実施していた記録があります。当時の監査資料には、東京港への客船誘致を進めるための関係者によるプロジェクトチームとともに、都民が参加しやすい価格でクルーズを実施したこと、2006年度は5回行ったことが記されています。
背景には、東京港にクルーズ客船を呼び込み、東京の観光や港のにぎわいにつなげたいという港湾振興の考え方があります。東京都港湾局は、客船の寄港が観光客の来訪や都内の経済効果、東京港の知名度向上につながり、東京港発着の船が各地へ寄港することで地方の活性化にもつながると説明しています。
つまり、都民クルーズは、都民に船旅の機会を提供する取り組みであると同時に、クルーズや東京港に親しんでもらい、客船誘致を後押しする広報・振興の側面も持っていると考えられます。
ただし、今回の募集資料には、制度を決めた単一の条例や、割引分を東京都がどのように負担しているかまでは書かれていません。公表資料から確認できるのは、東京都が客船会社や旅行会社と連携して募集を行い、通常料金より安い都民クルーズ料金を設定していることです。「税金で運賃を補助している」と断定することはできません。
アイデアは良い。参加しやすさには工夫の余地も
飛鳥Ⅱは、乗ってみたいと思っても、通常料金や旅行日数を考えるとなかなか機会を作りにくい客船です。都民向けに枠を設け、通常より安い料金で募集する取り組みには意義があります。東京港から出発するクルーズを知るきっかけにもなります。
一方で、今回の募集は、割引後も1人22万円以上で、平日に3日間休む必要があります。都民全体にクルーズを身近に感じてもらうことが目的なら、週末を含む日程、1泊2日など短いコース、より手頃な客室の枠を増やすと、参加を検討できる人は広がるかもしれません。
たとえば、土曜出発・月曜帰港なら平日休みは1日で済みます。連休や年末年始に合わせた日程も、仕事を持つ人には選択肢になりそうです。もちろん、船の運航予定や客室の確保など簡単ではない事情はあるでしょう。それでも、価格だけでなく「休みを取りやすい日程か」も、利用のしやすさを左右する大切な条件です。
今回の都民クルーズは、クルーズに乗るきっかけとしては魅力的です。ただ、「都民向けの割引」と「多くの都民が参加しやすいこと」は同じではありません。飛鳥Ⅱに乗ってみたい人にとって、今回の募集が日程と予算の両面で現実的かどうかを確認したうえで、応募を検討したいところです。
申し込み方法と締め切り
申込対象は都内在住または在勤の人です。応募多数の場合は抽選で、先着順ではありません。申込期限は2026年10月26日(月)です。1組1応募に限られ、複数の方法で申し込むと無効になるため注意が必要です。
申込方法は、電話、メール、ウェブフォームです。詳細や最新情報は、東京都の募集ページで確認してください。



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