海外居住者の不動産賃貸に個人事業税?総務省の検討内容と住宅市場への影響

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日本に住む大家には税金がかかるのに、海外に住み、国内に事務所を持たない大家には同じ税金を課せない。そんな個人事業税の仕組みを見直す動きが出ています。

2026年10月31日の日本経済新聞の報道によると、総務省は、日本国内で不動産賃貸業や駐車場業を営む海外居住者の所得に、個人事業税を課す方向で検討しています。

ただし、現時点では検討段階です。また、海外居住者の国内不動産所得が、これまで無税だったわけでもありません。

何が変わるのか、誰が対象になりそうなのか、不動産価格や家賃への影響も含めて整理します。

※2026年11月1日時点。報道内容と現行制度を区別して記載しています。

何が変わる?国内に事務所がない海外居住者への課税を検討

報道のポイントは、国内の不動産賃貸業などについて、海外居住者にも個人事業税の負担を求めるというものです。

項目 報道されている内容
検討する省庁 総務省
想定する事業 国内の不動産賃貸業、駐車場業など
見直しの焦点 国内に事務所などを持たない海外居住者への課税
対象となる税金 都道府県が課す個人事業税
目指す時期 2027年度税制改正大綱への反映
現在の状況 検討段階。施行日や詳細な要件は未確定

個人事業税は、一定の事業を行う個人に対して都道府県が課す地方税です。

現行制度では、国内の事務所・事業所などが課税の根拠になります。海外に住み、日本国内に課税上の拠点を持たずに賃貸業などを行う場合、個人事業税を課せないという問題があります。

今回の検討は、その課税の空白を見直すものといえます。

海外居住者は、これまで税金を払っていなかった?

ここは誤解しやすいところです。

海外に住んでいても、日本の不動産から得た家賃所得は、現在すでに日本の所得税の課税対象です。

国税庁も、非居住者が国内不動産の貸付けで得る所得について、確定申告が必要になることを説明しています。

また、国内の土地や建物を保有していれば、海外居住者にも固定資産税などがかかります。

税金 今回の話との関係
所得税 国内不動産の賃貸所得は、非居住者も現行制度で課税対象
固定資産税など 海外に住んでいても、国内不動産の所有に対して課税
個人事業税 国内の拠点の有無などによる課税の差を見直す検討

「海外の大家に初めて税金をかける」という理解では、実態を取り違えてしまいます。

なぜ見直す?同じ事業なのに負担が違う問題

日本に住む人も、海外に住む人も、国内の不動産を貸して収益を得る点は同じです。

それでも、事務所や住所の所在によって個人事業税の負担に差が生じるなら、公平なのかという疑問が出てきます。

この問題は以前から国会でも取り上げられています。2025年3月24日の参議院総務委員会では、外国に住む個人が国内に事務所を持たずに不動産業や駐車場業を営む場合の課税について、国内居住者との不公平を指摘する質問がありました。

総務省側も、地方税法の改正を含めた見直しを検討する考えを示しています。

今回の検討は、国内で得た事業の利益に対して、居住地による負担の差をどう埋めるかという問題です。

外国人だけが対象?海外に住む日本人はどうなる?

「海外居住者」と「外国人」は同じ意味ではありません。

所得税でも、居住者・非居住者は国籍だけで決まらず、国内に住所や居所があるかなどによって区分されます。

そのため、今回の制度も海外居住者を対象に設計されれば、海外に住む日本人が国内で賃貸事業を営む場合も、対象に含まれる可能性があります。

一方、日本に住む外国人は、海外居住者だから課税できないという問題とは区別されます。

具体的な対象範囲は今後の制度案を確認する必要がありますが、現段階で「外国人だけへの新税」と表現するのは適切ではありません。

税負担はいくら?現行制度なら税率は5%

現在、不動産貸付業や駐車場業の個人事業税率は5%です。年間を通じて事業を行う場合、事業主控除は290万円あります。

ただし、5%がそのまま家賃収入全額にかかるわけではありません。必要経費や控除などを踏まえて計算します。

例えば、個人事業税の計算上、事業主控除前の所得が年間600万円で、ほかの調整がない場合は、次のようになります。

(600万円-290万円)×5%=15万5,000円

これは現行制度を使った説明用の試算です。海外居住者に適用する具体的な計算方法が、今回の検討で確定したという意味ではありません。

なお、個人事業税には所得税の青色申告特別控除が適用されないため、所得税の申告書の所得額をそのまま当てはめられない場合があります。

マンションを1室貸すだけでも課税される?

賃貸収入がある人全員に、必ず個人事業税がかかるわけではありません。現行制度でも、事業に該当するかどうかの認定が必要です。

東京都では、貸付規模や賃貸料収入、管理状況などを総合的に勘案します。住宅の貸付けでは、一戸建て以外は10室以上といった基準がありますが、別の条件で認定される場合もあります。

海外赴任中に自宅を1室貸している人まで一律に課税される、と決まったわけではありません。

いつから?2027年度の改正を目指すが、開始日は未定

報道では、政府・与党の2027年度税制改正大綱への反映を目指すとされています。

ただし、税制改正大綱への記載を目指すことと、課税開始が決定することは別です。法改正の内容や施行時期によって、実際の適用は変わります。

今後確認したいのは、次の点です。

  • 国内にどのような拠点がなくても課税できるようにするのか
  • 事業規模や控除をどう扱うのか
  • 既存の所有物件から生じる所得にも、いつから適用するのか
  • 海外居住者の所得把握や徴収をどう行うのか

「2027年から一斉に徴収が始まる」とまでは、現段階では言えません。

マンション価格や家賃に影響はある?

ここからは、制度が導入された場合に考えられる影響です。

海外からの賃貸投資には、収益を押し下げる要因

新たに個人事業税がかかれば、対象となる投資家の税引き後の利益は減ります。

その分、購入価格を慎重に見積もったり、投資先を見直したりする可能性はあります。

ただし、今回の検討は個人事業税の適用範囲に関するものです。海外資金によるあらゆる不動産購入に、一律の追加税を課すという話ではありません。

この施策だけを理由に「東京のマンション価格が下がる」と予測するのは早計です。

家賃への転嫁も、自動的に起こるわけではない

所有者が増えた税負担を家賃に反映したいと考える可能性はあります。

しかし、実際に高い家賃で借り手がつくかは、周辺相場や空室状況、物件の条件次第です。税負担が増えた分だけ、そのまま家賃を上げられるわけではありません。

影響の大きさを判断するには、最終的な対象人数や物件数、増える税負担を確認する必要があります。

注目したいのは、課税の公平性と実効性

国内の不動産で同じように利益を得ているなら、海外に住んでいることだけで税負担に差が生じる仕組みは、見直す理由があります。

一方、制度を変えるだけでなく、所得を把握して実際に徴収できる仕組みも重要です。

今回のニュースは、国内の事務所の有無などによって生じていた個人事業税の負担差を見直す動きとして捉えると分かりやすくなります。

住宅価格への即効性を期待するよりも、まずは2027年度税制改正大綱と具体的な法案で、誰に、いつから、どのように課税するのかを確認したいところです。

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