マンションを探していると、ときどき周辺の所有権物件より手頃な価格の物件が見つかります。
よく見ると、権利形態の欄には「定期借地権」と書かれている。
立地もよく、建物の仕様も悪くない。それなのに価格は比較的抑えられているため、魅力的に感じる人もいるでしょう。
しかし、定期借地権マンションは、一般的な所有権マンションと同じ感覚で価格だけを比較すると危険です。
毎月の地代がかかり、契約期間が終われば建物を解体して土地を返還します。残存期間が短くなるにつれて、住宅ローンや売却のハードルが上がる可能性もあります。
私はマンションを購入するとき、定期借地権物件を選択肢に入れず、所有権の物件を選びました。
定期借地権マンションは、本当に購入の選択肢として「あり」なのでしょうか。
定期借地権マンションとは
定期借地権マンションとは、土地を所有せず、一定期間だけ借りて建てられた分譲マンションです。
一般的な所有権マンションでは、購入者が建物の専有部分に加え、敷地の所有権も持分として保有します。一方、定期借地権マンションで購入者が所有するのは建物の専有部分であり、土地は地主から借りています。
したがって、「購入しても何も自分のものにならない」という表現は、厳密には正しくありません。契約期間中は建物部分を所有し、売却や相続もできます。
ただし、土地の所有権は取得できず、契約期間には終わりがあります。
住宅用で多く利用される一般定期借地権は、借地期間が50年以上で、原則として契約の更新や建物の再築による期間延長がなく、契約終了時に建物の買取りを地主へ求めないことを定める仕組みです。満了時には建物を解体し、土地を返還するのが基本となります。これは国土交通省の定期借地権の解説にも示されています。
つまり、定期借地権マンションは「永続する不動産」ではなく、「終わる時期があらかじめ決まっている不動産」と考えたほうが分かりやすいでしょう。
最大の魅力は価格と立地
定期借地権マンションの最大の魅力は、土地を購入しない分、販売価格が抑えられやすいことです。
同じ予算でも、所有権マンションより駅に近い物件や、広い住戸、新しい建物を選べる可能性があります。
寺社、学校、企業、公的機関などが所有する土地のように、地主が土地を手放したくない好立地に定期借地権マンションが建つこともあります。そのため、「所有権ではなかなか出ない場所に住める」ことには大きな価値があります。
また、土地を所有しないため、土地部分の固定資産税や都市計画税を購入者が直接負担することはありません。
そして、満了時に建物を解体することが決まっている点は、建て替えも解体も進まず老朽化したマンションが残り続ける問題を避けやすいという見方もできます。
価格を抑えて好立地に住みたい人にとって、定期借地権マンションが魅力的なのは確かです。
購入前に知っておきたい6つの弱点
一方で、安さには理由があります。購入価格だけで判断せず、次の点まで確認する必要があります。
1.毎月の地代がかかる
土地を借りているため、住宅ローンを完済しても地代の支払いは続きます。
地代のほかに、管理費、修繕積立金、駐車場代なども必要です。物件によっては、契約終了時の建物解体に備える「解体準備金」も毎月徴収されます。
当初の購入価格が安くても、数十年分の地代と解体費用まで含めると、所有権物件との実質的な差は小さくなるかもしれません。
地代の改定条件や、解体費用が不足した場合の負担についても、契約書で確認しておく必要があります。
2.契約期間が終われば住み続けられない
定期借地権には明確な期限があります。
契約期間の満了後は、原則として建物を解体して土地を返還するため、その部屋に住み続けることはできません。購入時に若ければ、満了時にも存命である可能性があります。
「70年あるなら十分」と思うかもしれませんが、30歳で購入すれば満了時は100歳です。50年の物件なら80歳で住み替えが必要になります。
将来の住み替えを前提にできるのか。高齢になったときの住まいをどう確保するのか。購入時点から考えておかなければなりません。
3.残存期間とともに商品価値が縮んでいく
所有権マンションにも建物の老朽化や価格下落はあります。しかし、定期借地権マンションには、それに加えて「住める残り時間が減っていく」という要素があります。
契約満了時には借地権が消滅するため、残存期間が短くなるほど、買い手は限られやすくなります。
立地が非常によい物件なら一定の需要を保つ可能性はあります。すべての定期借地権マンションが一律に値崩れするわけではありませんが、所有権物件にはない期限が価格の重しになることは避けられません。
4.住宅ローンの選択肢が狭くなりやすい
定期借地権マンションでも住宅ローンを利用できる場合はあります。新築時には、販売会社が提携ローンを用意していることもあります。
問題になりやすいのは、残存期間が短くなった中古物件です。
フラット35では、定期借地権の場合、通常の借入期間と借地権の残存期間を比べて、短いほうが借入期間の上限になります。住宅金融支援機構の案内でも、この条件が明記されています。
購入希望者が長期のローンを組めなければ、毎月の返済額が大きくなり、購入できる人が減ります。
自分が購入できるかだけでなく、将来の買い手がローンを組めるかという視点も必要です。
5.売りたいときに売りにくくなる可能性がある
住宅ローンの制約と残存期間の減少は、そのまま売却の難しさにつながります。
国土交通省の検討資料でも、残存期間が短くなった定期借地権マンションでは、融資を受けにくくなり、売買が進まなくなることへの懸念が示されています。
所有権マンションも必ず希望価格で売れるわけではありません。しかし、定期借地権マンションは、築年数だけでなく借地の残り年数でも評価されます。
転勤、結婚、介護、病気などで予定より早く住み替えることになったとき、価格を下げても買い手が見つかりにくい可能性は考えておくべきでしょう。
6.資産として家族に残しにくい
契約期間中であれば相続はできますが、相続した人が受け取るのは、残り期間のある建物と借地権です。
期限が近ければ、売却が難しいだけでなく、地代や管理費、修繕積立金、解体に関する負担を引き継ぐ可能性もあります。
子どもへ不動産を残したい人や、老後に売却して生活資金や介護費用へ充てたい人にとっては、所有権物件より将来の選択肢が狭くなりやすいと考えられます。
「安いか」ではなく総額で比較する
定期借地権マンションを検討するときは、物件価格の差だけを見るべきではありません。
少なくとも、次の費用と将来価値を合計して比較する必要があります。
- 購入価格と諸費用
- 住宅ローンの金利と借入期間
- 借地期間中に支払う地代
- 地代の改定条件
- 管理費と修繕積立金
- 解体準備金や満了時の追加負担
- 売却時に残っている借地期間
- 将来売却できる価格
- 契約満了後の住み替え費用
定期借地権物件が1,000万円安くても、長期間に支払う地代などが1,000万円を超え、最後に資産が残らないのであれば、単純に「1,000万円得」とはいえません。
一方で、初期費用を抑えた分を投資や生活の充実に回せる人もいます。
大切なのは、安くなった金額を得したと考えるのではなく、何年住める権利にいくら払うのかを計算することです。
定期借地権マンションが向いている人
定期借地権マンションは、次のような人なら合理的な選択肢になり得ます。
- 所有することより、希望する場所に住むことを重視する人
- 借地期間が自分の想定居住期間より十分に長い人
- 将来、家族へ不動産を残す必要がない人
- 購入価格だけでなく、地代や解体費まで含めて判断できる人
- 売却益を期待せず、住居費として割り切れる人
- 所有権では出にくい希少な立地に大きな価値を感じる人
定期借地権マンションは、「土地を持たずに、一定期間、その立地と建物を使う商品」と考えれば分かりやすいでしょう。
資産形成より居住価値を優先し、期限を理解したうえで価格に納得できるなら、「あり」だと思います。
それでも私は所有権の物件を選んだ
私はマンション購入時、定期借地権物件を選択肢に入れませんでした。
購入後も地代がかかること、期間満了時に建物がなくなること、残存期間が短くなるほど売却や住宅ローンが難しくなる可能性があることが気になったからです。
せっかく大きなお金を払ってマンションを買うのであれば、住み続ける、売る、貸す、家族に残すといった将来の選択肢を、できるだけ多く持っておきたいと考えました。
もちろん、所有権マンションなら絶対に安心というわけではありません。
建物は老朽化しますし、修繕積立金の不足、建て替えの難しさ、立地による価格下落などのリスクもあります。それでも、少なくとも「この年になったら権利が終わる」という期限はありません。
私は購入価格の安さよりも、期限のない権利と将来の自由度を重視しました。
その結果、所有権の物件を選んでよかったと思っています。
まとめ|定借は「安いから買う」ものではない
定期借地権マンションは、購入の選択肢として「あり」だと思います。
ただし、それは仕組みを理解し、住める期間と支払総額に納得できる場合に限られます。
価格が手頃に見えても、地代や解体準備金がかかり、最後には土地も建物も手元に残りません。残存期間が短くなれば、ローンや売却で不利になる可能性もあります。
定期借地権マンションは、安い所有権マンションではありません。
「限られた期間、好立地で暮らす権利を買う」という、所有権マンションとは性格の異なる商品です。
購入価格の安さと好立地を取るのか。
それとも、期限のない権利と将来の選択肢を取るのか。
住まいを選ぶとき、あなたならどちらを重視するでしょうか。



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