JAL・ANAは値上げしても厳しい?燃料高と国内線運賃、SFC見直しから考える航空業界の現在地

飛行機の予約をするたびに、「以前より高くなった」と感じることが増えました。

JALの国内線運賃の見直しに加え、国内線への燃油サーチャージ導入の検討。ANAでも、事前に座席を指定できるかどうかで運賃の条件が分かれ、SFCの制度変更も発表されています。

利用者からすると、「料金は上がり、これまでのサービスにも条件が付くのか」と感じます。

では、航空会社は実際に苦戦しているのでしょうか。

決算から見えるのは、JAL・ANAとも需要を取り込み黒字を確保しているものの、燃料高で増収が利益につながりにくくなっているという状況です。

※2026年10月時点。業績比較には、確認できた両社の2027年3月期第1四半期決算(2026年4〜6月)を使用しています。報道されている米航空会社の7〜9月期とは対象期間が異なります。

JAL・ANAは黒字。それでも利益は減っている

まず、両社の連結業績を確認します。

項目 JAL ANAホールディングス
対象期間 2026年4〜6月 2026年4〜6月
売上収益・売上高 5,237億円 6,727億円
売上の前年同期比 +11.2% +22.6%
主な利益指標 EBIT 127億円 営業利益207億円
上記利益の前年同期比 ▲72.1% ▲43.5%

※JALのEBITは財務・法人所得税前利益です。ANAの営業利益とは定義が異なるため、金額だけで収益力の優劣は判断できません。

両社とも売上は増えていますが、利益は減っています。

つまり、航空需要がなくなったわけではありません。売上を増やしても、それ以上のペースで費用が膨らみ、利益を押し下げているのです。

また、連結業績には貨物や非航空事業なども含まれます。会社全体が黒字だからといって、国内線の全路線が十分に稼げているとは限りません。

燃料高の影響は、日本の航空会社にも大きい

JALの燃油費は約6割増加

JALの同期間の燃油費は、前年同期の940億円から1,488億円へ増えました。増加率は58.4%です。

わずか3カ月で、燃油費だけで548億円の負担増です。

運賃や搭乗率の改善で収入を伸ばしても、燃料費が急増すれば、その成果が利益として残りにくくなります。

「航空券が高いのだから、航空会社は相当もうかっているはず」とは言い切れないことが分かります。

ANAも、燃油費などの増加が増収を上回る

ANAホールディングスも、燃油費を中心とした費用増を決算で説明しています。

一方、国際旅客や貨物の収入は伸び、利益は会社の計画を上回りました。

燃料高の影響を受けながらも、旺盛な需要や価格設定で持ちこたえている状況です。「業績が悪化している」と「想定より健闘している」は、同時に成立します。

JALの国内線は、実際に高くなっているのか

JALの決算資料では、国内線の旅客1人当たり収入を示す「単価」が、前年同期の14,781円から15,741円へ、6.5%上昇しています。

会社は、運賃値上げやタイムセールの適正化などによって単価を高めたと説明しています。

そのため、「最近JALの国内線が高くなった」という実感には、決算上の裏付けがあります。

ただし、この6.5%は全航空券を一律に値上げした割合ではありません。利用路線や購入運賃などの構成変化も含む平均値です。

JALは2026年8月に、10月25日以降搭乗分のフレックスやセイバーなどの運賃・料金変更も発表しています。個々の値上げ額は路線、搭乗日、運賃種別で確認する必要があります。

国内線サーチャージは、値上げとは別に考える必要がある

JALは「JALグループ経営ビジョン2035」で、2027年4月から国内線への燃油サーチャージ導入を検討するとしています。

ここは、導入時期や徴収額まで確定した制度と混同しないことが大切です。今回確認した公式資料では「検討」という位置付けで、国内線で一律いくらかかるとは言えません。

通常運賃の改定は、燃料以外の費用や需要も含めて価格を見直すものです。一方、燃油サーチャージは燃料価格の変動に対応する追加料金です。

ただ、利用者の家計にとって大切なのは名称よりも支払総額でしょう。

基本運賃、燃油サーチャージ、空港施設使用料などを合わせ、最終的にいくら払うのか。 今後は、この比較がさらに重要になります。

国際線ですでに徴収されているサーチャージと、国内線で検討中の仕組みも区別する必要があります。

ANAの座席指定は「指定料」より、運賃プランの違い

ANAは2026年5月19日搭乗分から、国内線の主な運賃を「シンプル」「スタンダード」「フレックス」に変更しました。

運賃 座席指定の主な違い
シンプル 出発24時間前から、オンラインチェックイン時に空いている席を指定
スタンダード 事前座席指定が可能
フレックス 事前座席指定が可能

※希望席の確保を保証するものではありません。予約変更などの条件にも違いがあります。

シンプルは「最後まで座席を指定できない運賃」ではありません。予約時などの早い段階では指定できず、出発24時間前から指定できる仕組みです。

そのため、窓側や通路側を早く確保したい人、同行者と並んで座りたい人には、運賃の安さだけでは選びにくくなっています。

これは単純に座席指定料金を別途取るというより、安さを優先するプランと、事前指定などの利便性を含むプランを分けた仕組みです。

私には、利用者の求める条件に応じて収入を確保する戦略と映ります。ただし、この運賃体系の変更を燃料高だけが原因と断定することはできません。

SFCの見直しも、すべて燃料高のせいなのか

ANAのSFC新制度は、2028年4月1日開始予定です。

ANAカード・ANA Payの年間決済額300万円を基準に「SFC PLUS」「SFC LITE」へ区分されます。

なお、2026年4月の発表内容は9月に見直されています。SFC LITEについても、国内線ANAラウンジは混雑時を除いて利用でき、国際線ではANAグループ運航便への搭乗時に羽田・成田・ホノルルのANAラウンジを利用できる内容です。国内線の事前予約にも条件があります。

「年間300万円未満ならANAラウンジがすべて利用不可」という説明は、最新の見直し内容と一致しません。

ANAは公式に、ラウンジの混雑などで快適性の維持が難しい場面があることを説明しています。

決済額に応じた特典設計には、日常のカード利用を促す狙いもあると考えられますが、これは制度からの考察です。SFC変更を「燃料高で経営が苦しいから」と直接結び付ける根拠は確認できません。

航空業界は、もともと利益が残りにくいのか

その感覚は、業界全体の数字にも表れています。

国際航空運送協会(IATA)が2026年6月に公表した見通しでは、世界の航空会社の純利益率は2025年推計の4.2%から、2026年は2.0%へ低下する予測です。

これは100万円の売上に対して、最終的な利益が約2万円残る計算です。世界全体の予測であり、日本の各社の利益率を示す数字ではありません。

航空会社が利益を残しにくい理由には、次のような事業の特性があります。

燃料価格と為替を自社で決められない

燃料価格が上がっても、すでに販売した航空券を同じ割合で値上げすることはできません。

また、ドル建ての費用は円安で円換算の負担が増えます。燃料高と円安が重なると、日本の航空会社には厳しくなります。

空席があっても、運航には多くの費用がかかる

航空機の保有・リース、整備、人員の確保などには継続的な費用が必要です。

出発してしまえば、その便の空席を翌日に売ることもできません。安く売って席を埋める判断と、単価を守る判断の両方が必要になります。

値上げには、需要が減るリスクがある

会社が利益を確保するには値上げが必要でも、利用者の予算には限りがあります。

高くなれば、旅行の回数を減らす、行き先を変える、新幹線などに切り替える人も出てきます。費用増をすべて価格に転嫁できるとは限りません。

これらは一般的な事業構造の説明です。燃油・為替のヘッジなどで変動を和らげることはできますが、費用増の影響を完全になくすものではありません。

今後も、運賃値上げやサービス見直しが続くのか

燃料高や円安が続けば、運賃やサービス条件を見直す圧力は残ると考えられます。

ただし、「今後ずっと値上がりする」と決まっているわけではありません。燃料価格や為替、需要、競争環境が変われば、運賃にも変化が起こります。

また、燃料が値下がりしても、人件費や整備費などが上がっていれば、支払総額が以前と同じ水準まで戻るとは限りません。

予約するときは、最安運賃の金額だけでなく、事前座席指定、変更・払い戻し、必要な手荷物の条件までそろえて比較したいところです。

値上げへの理解と、利用者の納得感は別の問題

決算を見る限り、日本の大手航空会社も燃料高の影響を強く受けています。

運賃が上がっても、その分がそのまま利益になるわけではありません。安定した運航を続けるために、収益改善が必要な事情は理解できます。

一方で、利用者にとっては「同じように旅行したいだけなのに、以前よりお金がかかる」という現実があります。

料金が上がるなら、条件の分かりやすさや、支払う金額に見合うサービスも求めたくなります。

航空会社が持続できることと、利用者が納得して選べること。その両方を満たせるかが、これからの航空業界に問われていると感じます。

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