個人向け国債は本当にお得?金利・買い方・NISA・税金と「買うべき人」を解説

投資

株式市場の値動きが大きくなる一方で、個人向け国債の人気が高まっています。

以前は「元本割れしない代わりに、ほとんど利息が付かない商品」という印象でした。しかし金利のある世界が戻り、2026年9月募集分では税引前で年1.95〜2.24%。安全資産として無視できない水準になっています。

では、個人向け国債は本当にお得なのでしょうか。金利、購入方法、NISAや税金の扱い、どのタイプを選ぶべきかまで整理します。

※本記事の金利・制度は2026年9月10日時点の情報です。個人向け国債の金利は毎月変わるため、購入前に財務省の最新情報をご確認ください。

結論:個人向け国債は「増やす商品」ではなく「減らさずに置く商品」

最初に結論を書くと、個人向け国債は次のようなお金の置き場所として有力です。

  • 1年以上使う予定がない
  • 株式のような値下がりは避けたい
  • 普通預金に置いたままではもったいない
  • 株式中心の資産に安全資産を加えたい
  • 老後資金や数年後に使うお金を円で確保したい

一方、大きく資産を増やすための商品ではありません。株式投資の代わりというより、普通預金や定期預金と比較する商品です。

生活防衛資金のうち、すぐに使う可能性がある分は普通預金に残し、少なくとも1年間は使わない分を個人向け国債へ移す。こうした使い方が現実的です。

そもそも国債とは?

国債は、国が資金を調達するために発行する債券です。購入者は国にお金を貸し、その見返りとして利子を受け取り、満期になると元本が返還されます。

日本国債には多くの種類があります。

主な種類 特徴
固定利付国債 2年、5年、10年、20年、30年、40年など。満期まで金利が固定される
短期国債 満期が半年または1年の割引国債。主に金融機関などが取引する
物価連動国債 物価の動きに合わせて元本が増減する
GX国債 調達資金をGX(グリーントランスフォーメーション)投資に充てる
個人向け国債 個人が買いやすいように設計された、変動10年・固定5年・固定3年
新窓販国債 個人も買える2年・5年・10年の固定利付国債。ただし途中売却では価格が変動する

一般の国債は、満期前に市場で売却すると価格変動によって損失が出ることがあります。

これに対して個人向け国債は、発行から1年を過ぎれば国の中途換金制度を利用でき、額面金額は減りません。中途換金時に直前2回分の利子相当額が差し引かれますが、市場価格の下落による元本割れがない点が大きな違いです。

個人向け国債は3種類

個人向け国債には、次の3種類があります。

商品 満期 金利 特徴
変動10年 10年 半年ごとに見直し 市場金利が上がると受取利子も増える可能性がある
固定5年 5年 購入時のまま固定 現在の金利を5年間確保できる
固定3年 3年 購入時のまま固定 比較的短い期間で満期を迎える

いずれも最低金利は年0.05%、利子は年2回支払われます。最低1万円から1万円単位で購入でき、毎月募集されています。

変動10年は10年間引き出せないわけではない

「10年」と聞くと、10年間資金が拘束されるように感じます。しかし、原則として発行から1年を経過すれば、1万円単位で一部または全部を中途換金できます。

中途換金時には、直前2回分、つまりおおむね1年分の税引後利子に相当する金額が差し引かれます。元本が市場価格によって減るわけではありませんが、購入後1年以内は原則換金できないため、すぐに必要になる可能性があるお金には向きません。

2026年9月の金利は?

2026年9月募集分の金利は次のとおりです。

商品 税引前の年利 税引後の年利
変動10年 1.95% 1.5538575%
固定5年 2.24% 1.7849440%
固定3年 1.96% 1.5618260%

今月は固定5年が最も高く、税引前で年2.24%です。

仮にこの金利が1年間適用された場合の受取利子は、概算で次のようになります。

購入額 変動10年 固定5年 固定3年
100万円 約1万5,539円 約1万7,849円 約1万5,618円
1,000万円 約15万5,386円 約17万8,494円 約15万6,183円

変動10年の利率は半年ごとに変わるため、上表は現在の利率が1年間続くと仮定した目安です。

変動10年と固定5年、どちらを選ぶべき?

今の金利だけを比べれば、固定5年が有利です。しかし、今後も金利が上がれば、半年ごとに利率が見直される変動10年が追いつく可能性があります。反対に金利が下がれば、現在の年2.24%を固定できる固定5年が有利です。

判断基準は次のようになります。

変動10年が向いている人

  • 今後の金利上昇に対応したい
  • 満期まで保有する期間を最初から決めたくない
  • 1年経過後の換金しやすさを重視する
  • 長く安全資産として置いておきたい

固定5年が向いている人

  • 現在の比較的高い金利を5年間確保したい
  • 今後は金利が下がると考えている
  • 5年程度は使わない資金がある

固定3年が向いている人

  • 長期間保有することに抵抗がある
  • 3年後に使う予定の資金を運用したい
  • 将来の金利動向よりも、期間の分かりやすさを重視する

迷う場合は、購入時期や種類を分ける方法もあります。全額を一度に固定5年へ入れるのではなく、変動10年と固定5年を組み合わせたり、数カ月に分けて購入したりすれば、金利変動の影響を分散できます。

個人向け国債の購入方法

個人向け国債は、証券会社、銀行、信用金庫、農協、ゆうちょ銀行などで購入できます。金融機関によってはインターネットから申し込むことも可能です。

購入の流れはシンプルです。

  1. 個人向け国債を扱う金融機関を選ぶ
  2. 証券口座または国債の振替口座を開設する
  3. 募集期間中に商品と金額を指定する
  4. 購入代金を入金して申し込む

購入条件や金利は、どの取扱金融機関でも同じです。ただし、口座管理手数料の有無や購入キャンペーンは金融機関によって異なります。普段使っているネット証券など、管理しやすく手数料のかからない金融機関を選ぶのが無難です。

個人向け国債はNISAで買える?

個人向け国債はNISAでは買えません。

つみたて投資枠、成長投資枠のどちらも、預金・国債・社債は対象外です。そのため、個人向け国債の利子には通常どおり税金がかかります。

債券を組み入れた投資信託や上場ETFの中にはNISAで買える商品もありますが、個人向け国債とは別物です。投資信託やETFは市場価格が動くため、元本保証ではありません。

むしろNISA枠は、長期的に大きな値上がりが期待できる株式や株式投資信託に使い、個人向け国債は課税口座で保有するという考え方が合理的です。利回りが低い国債に貴重なNISA枠を使えないことは、それほど大きな欠点ではないでしょう。

税金と税制優遇は?

個人向け国債の利子には、原則として20.315%の税金がかかります。内訳は所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%です。受取時に源泉徴収されるため、確定申告をしないことも選べます。

一般の人が利用できる、個人向け国債独自の税制優遇はありません。

ただし、一定の障害者や遺族年金を受け取っている人などは「障害者等の特別マル優」を利用できる場合があります。対象者は国債と地方債を合計して額面350万円まで、その利子を非課税にできます。利用には金融機関を通じた手続きが必要です。

個人向け国債のメリット

元本割れしない

満期まで保有すれば額面どおりに償還されます。発行から1年後は中途換金制度を利用でき、市場金利の変動による元本割れもありません。

預金保険の上限を気にしなくてよい

銀行の一般預金は、原則として1金融機関あたり元本1,000万円とその利息までが預金保険制度の保護対象です。個人向け国債は銀行への預金ではなく国に対する債権なので、販売した金融機関が破綻しても権利は保護されます。

少額から購入できる

1万円から購入できるため、まとまった資金がなくても始められます。毎月発行されるので、購入時期を分散することもできます。

変動10年は金利上昇にある程度対応できる

普通預金や固定金利の定期預金に長期間置くと、その後に市場金利が上がっても金利は変わりません。変動10年は半年ごとに利率が見直されるため、金利上昇局面に対応しやすい設計です。

個人向け国債のデメリットと注意点

購入後1年間は原則換金できない

最大の注意点です。突然の出費に備える生活防衛資金を全額入れるのではなく、当面必要な現金は普通預金に残す必要があります。

中途換金すると直前2回分の利子が差し引かれる

1年経過後は換金できますが、直前2回分の税引後利子相当額が調整額として差し引かれます。短期間で換金すると、運用したメリットはほとんど残りません。

インフレに負ける可能性がある

税引後の利回りが年1.5〜1.8%程度でも、物価が年2%以上上昇すれば、お金の実質的な購買力は減ります。額面が減らないことと、生活上の価値が減らないことは同じではありません。

株式ほどの成長は期待できない

安全性が高い分、長期的な期待リターンは株式より低くなります。10年、20年かけて資産を大きく増やしたい人が、投資資金をすべて国債へ移すのは考えものです。

日本国の信用リスクはゼロではない

国が元本と利子を支払うため、安全性は非常に高い商品です。ただし、理論上は日本国の信用リスクまで完全にゼロになるわけではありません。また、円建て資産なので円安による海外に対する購買力の低下も防げません。

結局、個人向け国債はお得?買いなの?

個人向け国債は、誰にとっても無条件にお得な商品ではありません。しかし、1年以上使わない円資金を元本割れさせずに置きたい人には、かなり有力な選択肢です。

2026年9月は固定5年が年2.24%、変動10年も年1.95%あります。かつての超低金利時代と比べれば、普通預金に多額の現金を眠らせている人が検討する価値は十分にあります。

一方、資産形成の主役にする商品ではありません。私は株式を中心に運用していますが、だからこそ、株価が下落しても売らずに済むように、安全資産を別に持つ意味はあると考えています。

私なら、お金を次の3つに分けます。

  • 1年以内に使うお金:普通預金
  • 1年以上使わず、絶対に減らしたくないお金:個人向け国債
  • 10年以上使わず、値動きを受け入れて増やしたいお金:NISAで株式インデックス投資

個人向け国債は「これだけ買えば資産形成は完了」という商品ではありません。ただし、株式と現金の間を埋める安全資産としては、以前より明らかに魅力が増しています。

現在のような金利水準であれば、生活防衛資金を超えて普通預金に置いているお金の一部を移すのは「買い」だと思います。

参考資料

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