オルカンから約208億円流出、S&P500は?「売られたから売る」の前に考えたい長期投資

投資

「10月15日にオルカンから200億円もの資金が流出した」

そんな話を見ると、世界株への投資を続けていて大丈夫なのか、不安になるかもしれません。

公開されている基準価額と純資産総額から計算すると、2026年10月15日のオルカンは約208億円の純流出と推計できます。一方、同じeMAXIS SlimシリーズのS&P500は約174億円の純流入でした。

ただし、資金流出の数字だけで「みんなが狼狽売りしている」「長期投資は終わった」と判断することはできません。

コロナショック後の株価や、過去のマンション価格の推移も振り返りながら、下落時に何を基準に行動すべきか考えます。

※2026年10月25日時点で確認できた公開情報に基づきます。資金流出入は筆者推計であり、運用会社公表の設定・解約額ではありません。

10月15日、オルカンは約208億円流出。S&P500は約174億円流入

対象は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」です。S&P500に連動する商品全体の合計ではありません。

項目 オルカン eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
10月14日の基準価額 38,311円 45,567円
10月15日の基準価額 37,852円 44,929円
基準価額の前日比 約−1.20% 約−1.40%
10月15日の推定純流出入 約208億円の流出 約174億円の流入

出所:Yahoo!ファイナンス掲載の両ファンドの時系列データ。流出入は筆者計算。

両ファンドとも値下がりしましたが、資金の出入りは逆方向でした。少なくとも、この日の数字から「オルカンもS&P500も投資家が一斉に逃げ出した」とは言えません。

純資産が減った金額と、資金流出は違う

オルカンの純資産総額は、10月14日の約14兆2,633億円から、15日の約14兆716億円へ減っています。減少額は約1,917億円です。

しかし、これをすべて解約による流出と数えるのは誤りです。保有する株式や為替の値動きでも、純資産は増減するからです。

今回は、次の式で値動きの影響をおおむね取り除きました。

推定純流出入=当日の純資産総額−前日の純資産総額×(当日の基準価額÷前日の基準価額)

この計算で、オルカンは約208億円の流出、S&P500は約174億円の流入になります。公表数値の丸めなどによる誤差を含む概算です。

また、「208億円流出」は購入額と解約額の差し引きです。解約総額そのものでも、投資家の損失額でもありません。

オルカンの流出額は前日の純資産総額の約0.15%に相当します。大きな金額ですが、ファンド全体に対する割合も一緒に見る必要があります。なお、「過去最大」かどうかは全期間の比較を確認できていないため、この記事では断定しません。

なぜ売られた?資金流出だけでは理由は分からない

結論から言うと、今回確認した価格・純資産データには、投資家一人ひとりの売却理由は含まれていません。

相場下落への不安から売った人がいた可能性はあります。しかし、それが今回の流出の主因だったとまでは確認できません。

考えられる理由は、次のように複数あります。

売却の背景として考えられること 内容
下落への不安 損失拡大を恐れて売却する
利益確定 過去の値上がりで得た利益を現金化する
資産配分の調整 増えた株式の比率を下げ、現金や債券などへ移す
生活資金の確保 住宅購入、教育費、退職後の支出などに充てる
商品の乗り換え 別の投資信託やETFへ移す

これは一般に考えられる要因の整理であり、今回の解約理由を特定したものではありません。

オルカンが流出、S&P500が流入だったからといって、同じ人がオルカンを売ってS&P500を買ったとも分かりません。

また、投資信託は注文日、約定日、海外市場の値動きが反映される日にずれがあります。「15日のニュースを見て、その日のうちに208億円が逃げた」と単純に結び付けるのも適切ではありません。

ファンドの資金流出と、株価下落の原因も分けたい

外国株式型ファンドの円建て基準価額は、投資先の株価と為替の影響を受けます。株価が下がるほか、円高が進むことでも下落する可能性があります。

世界株や米国株がなぜ下がったのかという問題と、国内の特定ファンドからなぜ資金が流出したのかという問題は、別に検証する必要があります。

今回確認できたデータだけで、特定の経済指標やニュースを資金流出の原因と断定することはできません。

売却した人は、みんな狼狽売りなのか

狼狽売りとは、値下がりへの恐怖などから慌てて売ることです。

最初から10年以上持つつもりだったのに、価格が下がったことだけを理由に全部売るなら、当初の方針から外れた行動かもしれません。

一方、近く使うお金が必要になった人や、退職を前に株式の割合を下げる人まで、狼狽売りと呼ぶことはできません。

売ったという行動だけでは、その判断が合理的だったかどうかは分からないのです。

気を付けたいのは、他人の売却を見て、自分のお金の目的まで変えてしまうことです。資金流出の見出しは、自分も売るべきだという指示ではありません。

コロナショックで買った人が資産を増やしたのは事実?

広く分散された米国株を買い、その後も保有したケースでは、その見方を裏付けるデータがあります。

S&P500の終値を確認すると、次のように推移しました。

日付 S&P500終値 状況
2020年2月19日 3,386.15 コロナ前の最高値
2020年3月23日 2,237.40 コロナショックの安値
2020年8月18日 3,389.78 コロナ前の最高値を更新
2020年12月31日 3,756.07 年末には一段高
2024年12月31日 5,881.63 その後の長期推移の一例

出所:FRED、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスの月例レポート。

2020年2月の高値から3月の安値まで、下落率は約34%でした。それでも、その年の8月には終値でコロナ前の高値を更新しています。

さらに、2020年3月の安値から2024年末まででは約2.63倍。暴落直前の高値からでも約1.74倍でした。

これは米ドル建ての価格指数の比較で、配当、為替、税金、手数料は含みません。日本の投資信託を保有した人の運用成績と、そのまま同じにはなりません。

それでも、底値で買えた人だけでなく、暴落直前に買って持ち続けた人も、その後の上昇を受け取れたことは確認できます。

「100年に一度」は、投資判断の物差しになる?

コロナ禍でも「100年に一度の危機」といった表現は使われました。なお、金融市場でこの表現が特によく知られているのは、2008年のリーマンショックです。

こうした言葉は危機の深刻さを表しますが、株価の底や回復までの期間を教えてくれるわけではありません。

コロナショックでは早い回復が起きました。しかし、将来の下落も同じ速さで回復するとは限りません。

過去から学びたいのは、危機が軽かったということではなく、先行きが最も不安な時期と、投資を続ける価値がなくなった時期は、必ずしも一致しないということです。

下がった時こそ持ち続ける。余力があれば買い増す考え方

私は、長期の資産形成を目的に分散された株式へ投資しているなら、下落のたびに方針を変えず、保有や積立を続ける考え方には合理性があると思います。

金融庁も、資産形成の基本として長期・積立・分散投資を挙げています。ただし、元本割れの可能性がなくなるわけではありません。

積立中の人にとって、下落は同じ金額で多くの口数を買える局面でもあります。例えば、1万口当たり2万円なら1万円で5,000口、1万5,000円なら約6,667口を購入できます。

その後に価格が回復すれば、安い時期に買った口数が資産形成に寄与します。ただし、価格が回復しなければ損失は残ります。

買い増しの前に確認したい「余力」

ここでいう余力は、口座に残っている現金のすべてではありません。

  • 当面の生活費や緊急時のお金を確保している
  • 近い将来に使う予定の資金を除いている
  • 買った後にさらに下落しても生活に困らない
  • 自分で決めた株式の保有比率を大きく超えない

こうした条件を満たすお金があれば、買い増しは選択肢になります。

ただ、買い増しができなくても、無理のない積立を続けられれば十分です。下落するたびに全力で買うことまで、長期投資の条件にする必要はありません。

「売らずに持ち続けたい」なら、そのための現金も持っておく。これは矛盾する行動ではないと思います。

10年後に持ち続けてよかったと思える準備をする

オルカンから約208億円が流出した一方、同じ日のeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)には約174億円が流入していました。

この数字は投資家の行動の一面を表しますが、将来の相場も、自分が売るべきかどうかも決めてくれません。

コロナショック後の米国株では、恐怖の中でも保有を続けた人が、その後の上昇を受け取れました。マンションにも、短期的な下落と長期的な上昇が同時に成立した時期があります。

だからこそ私は、長期で持つと決めた資産については、下落の見出しだけで手放したくないと思います。生活と資産配分に余裕があれば、買い増しも検討したいところです。

そのために必要なのは、「必ず上がる」と信じ込むことよりも、時間がかかっても持ち続けられる金額で投資することではないでしょうか。

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