会社の出張で飛行機に乗ったとき、JALやANAのマイルを自分のマイレージ口座に登録してよいのでしょうか。
航空券代を支払うのは会社や国・自治体です。しかし、実際に飛行機へ乗るのは社員や公務員本人です。
「お金を出した会社のものでは?」
「搭乗した人に付くのだから、個人のものでは?」
どちらにも一理あり、少し曖昧に感じる問題です。
先に結論をいうと、航空会社の制度上、フライトマイルは原則として搭乗した本人の口座に積算されます。ただし、そのマイルを私的に使ってよいかどうかは、会社の就業規則や出張旅費規程、公務員なら所属する省庁・自治体などのルールによって決まります。
つまり、「口座上は個人に付くこと」と「自由に私用できること」は、同じではありません。
この記事では、会社員と公務員が出張で取得したマイルの扱い、航空会社のスタンス、実際に話題となった事例を紹介します。
※本記事は2026年8月時点で確認した公開情報をもとにした一般的な解説です。個別の判断は、勤務先の最新の就業規則・旅費規程などを確認してください。
結論|出張マイルの扱いは勤務先のルール次第
まず、会社員と公務員の違いを簡単に整理します。
| 立場 | 航空会社の制度上 | 私的に使えるか |
|---|---|---|
| 会社員 | 原則として搭乗者本人のマイレージ口座に積算 | 会社の就業規則・出張旅費規程などによる |
| 国家公務員 | 航空会社から搭乗者個人に提供されるサービス | 各府省のルールに従う。公費節減のため公務利用を求める場合がある |
| 地方公務員・国立大学法人など | 基本的な仕組みは同じ | 自治体・所属法人ごとに異なる |
マイルの帰属を直接、全国一律に定めた法律があるわけではありません。
そのため、会社員なら「うちの会社では出張マイルを個人で使ってよいのか」、公務員なら「所属先はどのような取扱いを定めているか」が最も重要です。
航空会社のスタンス|マイルは運賃を払った人ではなく搭乗者に付く
飛行機のフライトマイルは、単純に「航空券代を支払った人」へ付くものではありません。
会社が航空券を手配し、会社の法人カードで代金を支払った場合でも、搭乗者本人のマイレージ番号を予約に登録すれば、基本的にはその搭乗者の口座にフライトマイルが積算されます。
JALカードの公式サイトも、マイルは原則として飛行機に搭乗した個人に付与されると説明しています。また、JALの中小企業向け法人カードでも、フライトマイルはカード使用者ごとに積算され、使用者間で共有・合算・譲渡できないと案内されています。
ANAマイレージクラブの規約でも、積算されたマイルは原則として共有・合算・譲渡できません。
したがって、航空会社側から見ると、マイルは「会社が払った航空券の値引き」ではなく、搭乗した会員に提供するサービスという位置づけです。
ただし、航空会社が個人口座へ積算することと、その人が勤務先に無断で私的利用してよいかは別問題です。航空会社は、それぞれの会社の社内規程まで判断してくれるわけではありません。
フライトマイルとカード決済のポイントは別物
ここは混同しやすいところです。
- フライトマイル:実際に飛行機へ乗ったことに対して積算される
- カードのポイントやショッピングマイル:航空券代をカードで決済したことに対して付与される
会社が航空券を直接手配しても、搭乗者にフライトマイルが付く場合があります。一方、個人のクレジットカードで立て替えた場合は、フライトマイルに加えてカード決済分のポイントも付くことがあります。
この2つは発生理由が異なるため、勤務先の規程でも別々に扱われる可能性があります。
会社員の出張マイルは誰のもの?
民間企業の社員については、出張で発生したマイルの扱いを一律に定めた法律はありません。実際の扱いは、勤務先のルールによっておおむね次の3種類に分かれます。
1.個人で貯めて私的に使ってよい会社
出張マイルを社員の付随的な利益として認め、使い道まで管理しない会社です。
この場合は、自分のJALマイレージバンクやANAマイレージクラブの番号を登録し、貯まったマイルを旅行などに使えます。
会社にとっても、社員一人ひとりのマイル残高や有効期限を管理する手間がありません。出張回数がそれほど多くない企業では、管理コストを考えて個人利用を黙認または明示的に認めているケースも考えられます。
2.取得は認めるが、次回の出張に使わせる会社
マイルは社員個人の口座で管理するものの、一定数貯まったら特典航空券などに交換し、次の業務出張へ充てる方式です。
会社は航空券代を節約できますが、私用で貯めたマイルと出張で貯めたマイルが同じ口座に混在すると、どこまでが会社関連なのか分かりにくくなります。出張分の記録や残高報告を求めるなど、運用には相応の手間がかかります。
3.出張マイルの取得・私的利用を禁止する会社
社員間の公平性や不正防止の観点から、出張で個人のマイルを貯めること自体を禁止したり、私的利用を禁止したりする会社もあります。
この規程があるのに無断で取得・使用すれば、社内処分の対象となる可能性があります。
「航空会社が自分の口座に付けてくれたから問題ない」とは限りません。勤務先との関係では、就業規則や出張旅費規程を守る必要があります。
出張マイルを使うと横領になる?
出張で得たマイルを私的に使っただけで、直ちに業務上横領になるとは一般にいえません。
マイルは航空会社と会員個人との契約に基づくサービスであり、現金そのものではありません。また、会社経費で購入した航空券から発生するマイルの帰属を直接定めた法律もありません。
一方で、会社が規程によって出張マイルを会社のために管理・使用すると明確に定めている場合は話が変わります。規程に反して私的に使えば、少なくとも就業規則違反として、懲戒や返還請求などの問題へ発展する可能性があります。
重要なのは、「横領罪になるかどうか」だけを基準にしないことです。刑事事件にならなくても、会社との信頼関係を損ねたり、社内処分を受けたりする可能性はあります。
迷ったときは、総務や経理へ「出張で付くフライトマイルを個人口座に登録してよいか」「私的利用してよいか」と確認するのが安全です。
公務員の出張マイルはどうなる?
公務員の場合は、出張費の原資が税金であるため、民間企業以上に厳しく見られやすい問題です。
2008年の政府答弁では、マイレージサービスを「航空会社が旅客個人に対して提供するサービス」と説明する一方、国民の信頼確保の観点から、各府省で公費出張によるマイルの取得・使用を自粛させ、公費節減に活用できる取扱いを検討するとしました。
ここでも、マイルが航空会社から個人に提供される仕組みであることと、公務員が私的に使ってよいかどうかは分けて考えられています。
省庁・自治体・法人によって運用が違う
公務員だから全国一律に同じというわけではありません。
所属先によって、次のような違いがあります。
- 公費出張では個人のマイルを取得しないよう求める
- 公務用のマイレージ口座を作り、次の出張へ利用する
- マイルの取得状況を本人に管理・報告させる
- 私的利用を自粛させる
国立大学法人の例では、九州大学が2010年に、公費で取得したマイルは職員が自己管理し、私的使用を自粛すること、一定数以上貯まれば特典航空券へ交換して業務出張に使うことを通知しています。
公務員や国立大学法人の職員は、「周りも貯めているから大丈夫」と判断せず、自分の所属先の旅費規程や通知を確認する必要があります。
実際にあった「100万マイル」が国会で質問された話
出張マイルをめぐる興味深い例として、外務省職員の「100万マイル」が国会で取り上げられたことがあります。
2007年、週刊誌に、外務省の局長の一人が「マイルが百万マイルも溜まっているのでファーストクラスにアップグレードします」と発言したとする記述がありました。
これを受け、衆議院議員が政府に対し、その100万マイルは誰のものなのか、金額に換算するといくらなのか、公務出張で取得したものを使うことは問題ないのかと質問しました。
政府答弁は、外務省では当該発言を確認できず、資料も存在しないため回答困難というものでした。結局、100万マイルの真偽や使途が明らかになったわけではありません。
しかし、「出張で貯めたマイルは誰のものか」という一見小さな疑問が、国会の質問主意書になるほど注目された例として興味深い話です。
100万マイルあれば、時期や路線、必要マイル数にもよりますが、国際線の上位クラスを含め、かなり多くの特典航空券へ交換できる規模です。頻繁に海外出張をする職員だけが大きな利益を得ることへの疑問が生まれたのも無理はありません。
公用マイルを厳密に管理したら、手間の方が大きかった?
もう一つ面白いのが、公用マイルを管理するための事務負担です。
河野太郎氏は2016年、霞が関の業務見直しについて、航空機を利用する職員に公務用のマイレージカードを作らせていたものの、多くの職員は公務出張に使えるほどマイルが貯まらず、それでもカード作成や管理の手間が発生していたと紹介しています。
そこで、公務出張で貯めたマイルを次回以降の出張で使える見込みがある職員に限ってカードを作る運用へ統一したとしています。また、私用カードへの登録は自粛を求めつつ、登録していないことの確認までは行わない方針になりました。
税金で得たマイルを無駄なく公務へ使うという考え方は分かりやすいものです。しかし、少額のマイルを厳密に追いかけるために多くの職員が事務作業をすれば、かえって人件費や管理コストが大きくなる可能性があります。
「マイルを一粒も逃さず回収すること」と「行政全体のコストを下げること」は、必ずしも同じではないという面白い例です。
出張の多い人だけが得をするのは不公平?
会社が出張マイルの私的利用を認めた場合、海外出張の多い部署や役職の人ほど多くのマイルを獲得できます。
長距離路線に繰り返し乗れば、特典航空券に交換できるだけでなく、航空会社の上級会員資格に近づくこともあります。ラウンジ、優先搭乗、手荷物の優先返却など、マイル以外のメリットが生まれる場合もあります。
一方、出張のない社員には何もありません。これを不公平な福利厚生と見る考え方もあります。
ただ、出張には早朝移動、長時間のフライト、家を空ける負担もあります。そのため、会社が「出張者への小さな付随的メリット」と割り切って個人利用を認めることにも合理性があります。
どちらが正解というより、会社が明確なルールを作り、全社員へ同じ基準で適用することが重要です。
会社員・公務員が搭乗前に確認したいこと
出張で飛行機に乗る前に、次の点を確認しておくと安心です。
- 就業規則や出張旅費規程にマイルの記載があるか
- 個人のマイレージ番号を予約へ登録してよいか
- 貯めたマイルを私的に使ってよいか
- 取得したマイルの報告義務があるか
- 特典航空券を次回の出張へ使う決まりがあるか
- 個人カードによる航空券代の立替払いが認められているか
規程に何も書かれていない場合も、自己判断で大量のマイルを使う前に確認した方が安全です。メールなど記録が残る形で確認しておけば、担当者が変わった場合にも説明しやすくなります。
まとめ|口座は個人、使い道は勤務先のルールで決まる
出張で貯まったマイルについて、最も分かりやすく表現すれば、**「航空会社の口座上は搭乗者個人に付くが、その使い道は勤務先のルールに従う」**となります。
- 航空会社は、原則として実際に搭乗した会員へフライトマイルを積算する
- 会社員は、就業規則や出張旅費規程によって私的利用の可否が決まる
- 公務員は所属する省庁・自治体などの規程に従い、公務利用や私的利用の自粛を求められる場合がある
- 法律で一律に「会社のもの」「個人のもの」と決められているわけではない
- 規程違反は、刑事事件にならなくても懲戒などの問題になる可能性がある
出張の航空券を会社や税金で購入したからといって、フライトマイルが自動的に会社や国の共通口座へ入るわけではありません。かといって、個人口座に積算されたから自由に使ってよいとも限りません。
少し歯切れの悪い結論ですが、これが出張マイルの実態です。出張予定がある人は、搭乗前に勤務先のルールを一度確認してみてください。



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