米国ETFは今も買う価値がある?VTIとS&P500投信を両方持って感じた違い
米国株へ投資する方法として、以前から人気があるのがVTIやVOOなどの米国ETFです。
一方、現在はeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)をはじめ、低コストで米国株へ投資できる国内投資信託が充実しています。
日本円のまま購入でき、NISAで自動積立もできるため、わざわざ円を米ドルへ交換して米国ETFを買う必要はあるのか、疑問に思う人もいるでしょう。
私自身、米国ETFのVTIと、S&P500に連動する国内投資信託の両方を保有しています。
実際に両方を持ってみると、投資先や値動きの違いよりも、米ドルへの交換、分配金の再投資、税金、積立のしやすさといった管理面の違いを強く感じます。
この記事では、低コスト投資信託が充実した現在でも米国ETFを買う価値があるのか、VTIとS&P500投信を比較しながら考えてみます。
結論|米国ETFの価値はあるが、無理に選ぶ必要はなくなった
米国ETFには現在も買う価値があります。
VTIなら、低い経費率で米国の大型株から中小型株まで幅広く投資できます。米ドルで分配金を受け取りたい人や、リアルタイムで売買したい人にも向いています。
一方、S&P500へ長期投資することが目的なら、あえて米ドルへ交換して米国ETFを購入する必要性は以前より小さくなっています。
国内のS&P500投信なら、日本円のまま少額から自動積立でき、ファンドが受け取った配当も自動的に再投資されます。NISAのつみたて投資枠を使えることもメリットです。
これからNISAで米国株投資を始めるなら、国内投資信託だけでも十分でしょう。
ただし、すでにVTIを保有している人が、便利さだけを理由に売却する必要はありません。既存のVTIは保有を続け、今後の新規資金をS&P500投信へ振り向ける方法も合理的です。
国内投資信託の充実で米国ETFの必要性は小さくなった
現在は日本国内にも低コストのインデックスファンドが数多くあります。
代表的なeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬は年率0.08140%以内です。eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)交付目論見書
米国ETFのVTIは年0.03%なので、保有コストだけを比べればVTIの方が低コストです。Vanguard公式のVTI商品情報
ただし、VTIでは円を米ドルへ交換する際の為替コストがかかることがあります。年4回受け取る分配金を再投資する場合は、自分で買い付ける必要もあります。
国内投資信託なら、日本円のまま少額から積み立てられ、配当もファンド内で再投資されます。購入から再投資まで含めた手間で比べると、国内投資信託の方が扱いやすいでしょう。
資産形成期に分配金を使う予定がなく、すべて再投資したい人にとっては、国内投資信託の仕組みが合っています。
それでも米国ETFを買うメリット
国内投資信託が便利になっても、米国ETFの価値がなくなったわけではありません。
主なメリットは次のとおりです。
- 経費率が低い
- 米ドルで分配金を受け取れる
- 市場が開いている時間はリアルタイムで売買できる
- 指値注文ができる
- 国内投資信託では選びにくい商品へ投資できる
米国市場には、株式市場全体、S&P500、高配当株、債券、セクター、テーマ型など、数多くのETFがあります。
VTIやVOOのような主要指数への投資だけでなく、国内投資信託にはない資産や運用方法を取り入れたい場合は、米国ETFが有力な選択肢になります。
また、将来の海外旅行や海外での支払いに米ドルを使いたい人、米ドルで定期的な収入を受け取りたい人にとっては、米ドル分配金にも価値があります。
反対に、分配金をすべて再投資する人にとっては、受け取るたびに税金と再投資の手間が発生するため、必ずしもメリットとはいえません。
VTIとS&P500投信の違い
VTIは米国市場に上場するETFで、米国の大型株だけでなく、中型株、小型株まで含めて投資します。
Vanguardによると、2026年6月末時点の保有銘柄数は3,531銘柄です。
一方、S&P500は米国を代表する大型企業約500社で構成される株価指数です。S&P500そのものを購入するのではなく、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)やVOOなど、指数への連動を目指す商品を購入します。
S&P500は約500社で構成されていますが、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしています。S&P Dow Jones Indices公式サイト
| 項目 | VTI | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) |
|---|---|---|
| 商品の種類 | 米国上場ETF | 国内投資信託 |
| 投資対象 | 米国株式市場のほぼ全体 | 米国の主要大型企業 |
| 銘柄数 | 約3,500銘柄 | 約500社 |
| 売買通貨 | 米ドル | 日本円 |
| 為替の影響 | 受ける | 受ける |
| 運用コスト | 年0.03% | 年0.08140%以内 |
| 分配金 | 原則年4回 | これまで0円 |
| NISA | 主に成長投資枠 | つみたて投資枠・成長投資枠 |
VTIの方が銘柄数は多いものの、VTIも時価総額に応じて銘柄を組み入れます。そのため、Apple、Microsoft、NVIDIAなどの巨大企業が大きな割合を占め、上位構成銘柄はS&P500とほぼ同じです。
実際、VTIとS&P500の値動きには大きな差がありません。
| 期間 | VTI | VOO(S&P500) |
|---|---|---|
| 1年間 | 19.80% | 19.53% |
| 5年間 | 年率11.75% | 年率12.82% |
| 10年間 | 年率14.53% | 年率15.04% |
※2026年7月31日時点、米ドルベース、分配金再投資後の実績。Vanguard公式運用実績
直近5年や10年では大型ハイテク株が強かったためS&P500が上回っていますが、中小型株が強い相場ではVTIが上回る可能性もあります。
どちらが将来高いリターンになるかは分かりませんが、構成銘柄の大部分が重複しているため、長期的な値動きは似やすいと考えられます。
円で買うS&P500投信も為替の影響を受ける
VTIは米ドルで購入するため、米ドル資産であることが分かりやすい商品です。
一方、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は日本円で購入しますが、実際の投資先は米国企業の株式です。原則として為替ヘッジも行われないため、S&P500の値動きだけでなく、米ドルと日本円の為替変動も基準価額に反映されます。三菱UFJアセットマネジメント公式FAQ
つまり、VTIは米ドルで売買する米国株式、S&P500投信は日本円で売買できる米国株式です。
どちらも資産配分上は外国株式であり、円高は円換算した評価額の下落要因、円安は上昇要因になります。S&P500投信を日本円で購入しても、為替リスクを避けられるわけではありません。
米国ETFの分配金と売却益にかかる税金
米国ETFは、分配金と売却益で税金の扱いが異なります。
| 項目 | 米国の税金 | 日本の税金 | 外国税額控除 |
|---|---|---|---|
| 課税口座の分配金 | 原則10% | 20.315% | 対象になり得る |
| 課税口座の売却益 | 原則なし | 20.315% | 対象外 |
| NISAの分配金 | 原則10% | なし | 対象外 |
| NISAの売却益 | 原則なし | なし | 不要 |
VTIの分配金には、原則として米国で10%の税金が源泉徴収されます。課税口座では、その後に日本でも20.315%が課税されます。
この二重課税を調整する制度が外国税額控除です。確定申告をすれば、米国で課された税金を日本の所得税や住民税から一定の範囲で控除できます。
ただし、申告すれば米国税10%が必ず全額戻るわけではありません。外国税額控除には、所得税額や国外所得などから計算される控除限度額があります。国税庁「居住者に係る外国税額控除」
一方、VTIを売却して利益が出た場合、米国では原則として課税されません。円換算した売却益に対して、日本で20.315%が課税されます。
売却益は二重課税ではないため、外国税額控除の対象にもなりません。
例えば、円換算した購入金額が1,000万円、売却金額が1,500万円なら、500万円の利益に対して日本で約101万5,750円が課税されます。
なお、購入時と売却時の金額はそれぞれ日本円に換算して計算します。VTIのドル価格が変わっていなくても、購入時より円安になっていれば、円換算では利益が発生することがあります。
NISAでは売却益に米国でも日本でも原則として税金がかかりません。ただし、分配金の米国税10%は残り、日本では非課税で二重課税にならないため、外国税額控除も利用できません。
VTI保有者がS&P500投信を買い足す意味
すでにVTIを保有している人が、S&P500投信を買い足しても問題ありません。
ただし、両者の構成銘柄は大きく重複しています。両方を持っても、米国以外の国や別の資産へ分散されるわけではなく、実質的には米国大型株の比率を高めることになります。
それでも、次のような理由があるなら両方を保有する意味があります。
- 既存のVTIを売却すると譲渡益課税が発生する
- 今後はNISAで自動積立したい
- 円から直接購入できる商品へ切り替えたい
- 分配金の再投資や確定申告の手間を減らしたい
課税口座のVTIに大きな含み益がある場合、売却してS&P500投信へ乗り換えると、利益に対して20.315%の税金がかかります。
投資先が大きく変わらないのに、税金を支払ってまで乗り換える必要があるのかは慎重に考えるべきでしょう。
既存のVTIは保有を続け、新規資金だけをS&P500投信へ振り向ければ、売却益への課税を避けながら運用方法を変えられます。
実際に両方保有して感じること
私自身、VTIとS&P500投信の両方を保有しています。
実際に持ってみると、日々の値動きはほとんど同じです。米国株が上昇すればどちらも上がり、円安になれば円換算した評価額が増えます。
両方を保有したからといって、分散効果が大きく高まったという実感はありません。
むしろ、違いを感じるのは保有後の管理です。
VTIでは米ドルで分配金を受け取り、再投資する場合は自分で買い付けます。外国税額控除を受けるなら確定申告も必要です。
S&P500投信なら、日本円で積立設定をしておけば自動的に購入され、配当もファンド内で再投資されます。
投資対象の違いよりも、VTIは自分で管理する米国ETF、S&P500投信は積立と再投資を任せられる国内商品という違いの方が大きいと感じています。
まとめ|米国ETFにこだわらなくても米国株へ投資できる
米国ETFには、低い経費率、米ドル分配金、リアルタイム売買、商品の豊富さといったメリットがあります。現在も十分に買う価値のある商品です。
一方、S&P500へ長期投資することだけが目的なら、国内の低コスト投資信託でも実現できます。
これからNISAで積立を始める人や、為替交換、分配金の再投資、確定申告の手間を減らしたい人には、国内投資信託の方が使いやすいでしょう。
すでにVTIを保有しているなら、無理に売却して一本化する必要はありません。既存のVTIは保有を続け、新規資金をS&P500投信へ振り向ける方法も合理的です。
私自身も、保有しているVTIを売却してまで一本化する必要はないと考えています。
その一方で、これから新たに米国株へ投資するなら、低コストで手間の少ないS&P500投信でも十分だと感じています。



コメント