インド株ブームはどうなった?BRICS投資の現在と、オルカンとの違い

投資

「これからはインドの時代」「人口が増える国に投資すれば、長期で大きく伸びる」

インド株の投資信託について、こうした説明を見かけた人は多いのではないでしょうか。以前はブラジル、ロシア、インド、中国などをまとめた「BRICS」も、将来の成長を取り込む投資先として注目されました。

では、その期待は今どうなっているのでしょうか。

インドは今も投資対象ですが、経済が成長することと、投資で利益が出ることは別です。 また、BRICS各国をまとめて「有望」「失敗」と判断することもできません。

私はインド株やBRICSに特化した投資信託を積極的に買うつもりはありません。ただし、買わない理由は「今後まったく発展しないから」ではなく、成長期待だけで投資先を増やす必要はないと考えているからです。

この記事では、インド株の足元、BRICS投資の注意点、オルカンとの関係を整理します。

※2026年11月時点で確認できた情報に基づきます。市場データは項目ごとに基準日が異なります。

インド株は今どうなっている?グラフで見る投資ブームの現在

まず、インドの大型・中型株を対象とする「MSCI India Index」の成績を見てみます。通貨や配当の条件をそろえ、米ドル建て・配当税引後再投資の数値で比較しました。

期間 MSCI India Indexの騰落率
2021年 +26.23%
2022年 -7.95%
2023年 +20.81%
2024年 +11.22%
2025年 +2.62%
2026年1〜9月 -14.94%

※2021〜2025年は各年1年間、2026年は9月末までの途中経過です。2021〜2025年はMSCI公式資料、2026年はBlackRockのINDA公式ページに掲載された同指数のベンチマーク実績を使用しています。日本の投資信託の円換算リターンではありません。

2023年・2024年は上昇しましたが、2025年は小幅高にとどまり、2026年は9月末まで下落しています。 成長への期待がある国でも、毎年高いリターンが出るわけではないことが分かります。

例えば、指数に連動する米ドル建て資産を2025年末に100万円相当保有していたと仮定すると、2026年9月末には約85.1万円相当です。これは円ドル相場を固定し、商品固有の費用などを考慮しない計算例です。

直近には反発もある。「終わった」と断定するのも早い

一方、足元では持ち直しも見られます。

米国上場の「iShares MSCI India ETF(INDA)」の米ドル建てNAV総収益率は、2026年9月末までの年初来が-13.47%、10月30日まででは-12.08%でした。指数そのものとは税や費用、評価方法が異なりますが、インド株に投資する実際の商品の状況を確認する参考になります。

さらに11月3日、現地の代表指数「Nifty 50」は前日比1.58%高の23,810.85で取引を終えました。4営業日で約5%上昇し、約2か月ぶりの高値となっています。ロイターは企業決算、原油価格の落ち着き、海外投資家の買い戻しが支えたと報じています。

年初からの苦戦と、直近の反発は両立します。 数日間の上昇だけで長期の上昇局面に戻ったとは判断できません。

なぜインド株は期待ほど上がらないのか

2026年の苦戦を考えるうえでは、経済成長以外の条件も重要です。

原油高は企業・家計・通貨に負担をかける

インドは原油の多くを輸入に頼るため、原油価格の上昇は輸入代金や企業のコストを押し上げます。家計の購買力が圧迫され、インフレやルピーへの下落圧力につながることもあります。

「人口が増え、消費が伸びる」という長期の期待があっても、エネルギー価格の上昇による短期の負担を避けられるわけではありません。

海外資金は、成長率だけで投資先を選ばない

海外投資家は、インドの成長率に加え、米国の金利、為替、ほかの国の株価や利益成長も比較しています。

インドの成長見通しが変わらなくても、別の市場の方が価格面で魅力的になれば、資金がそちらへ移る可能性があります。外国人投資家の資金流出も、2026年の株価の重荷として報じられています。

資金が流出したから「インドに未来がない」とは限らず、国内景気が好調だから必ず海外資金が集まるとも限りません。

なぜ「インドが成長する」と「インド株で儲かる」は違うのか

インドのような成長国に投資するとき、特に注意したいのは次の3点です。

1.将来の成長が、すでに株価に織り込まれている

「これから伸びる」と多くの人が考える国では、その期待を反映して株が高く買われることがあります。

例えば、1株当たり利益が100円、PERが30倍なら、株価は3,000円です。その後、利益が150円に増えても、PERが20倍になれば株価は同じ3,000円です。

項目 購入時 成長後
1株当たり利益 100円 150円
PER 30倍 20倍
株価 3,000円 3,000円

※仕組みを説明するための仮定です。配当・為替・費用は考慮していません。

企業利益が50%増えても、投資家が払う評価倍率が下がれば、株価が上がらないことがあります。

実際、2026年10月30日時点のMSCI指数では、インド株の予想PERは18.45倍、全世界株式のMSCI ACWIは15.64倍でした。業種構成などが異なるため、この数字だけで割高とは断定できません。ただ、インド株が「成長する国を安く買える投資先」とは限らないことは分かります。

2.経済全体の成長が、上場企業の1株当たり利益に直結するとは限らない

GDPは国内で生み出された付加価値を測る指標です。一方、株式投資では、保有する企業が利益を増やし、その成果が株主に帰属することが重要になります。

経済が成長しても、競争の激化で利益率が下がったり、増資で株数が増えたりすれば、1株当たりの利益が同じように伸びるとは限りません。

人口が多い、若い人が多いという条件も、それだけでは十分ではありません。教育、雇用、インフラ、生産性の改善が伴うかを見る必要があります。

3.通貨安と費用が利益を削ることがある

為替ヘッジのない投資信託では、現地株が上昇しても、現地通貨が円に対して下落すると円換算の利益が減ります。反対に、円安が利益を押し上げる場合もあります。

また、投資信託では信託報酬などの費用が継続してかかります。購入時手数料、実質的な運用コスト、指数との連動状況まで含めて確認したいところです。

「インドに期待しているか」と「その投資信託を、その価格と費用で持ちたいか」は、別々に考える必要があります。

それでもインドが期待される理由と、実現に必要な条件

インドへの期待を、単なるブームとして片付けることもできません。人口の大きさ、消費市場、IT・サービス産業などは、長期の成長を考える材料になります。

ただし、成長の余地があることと、その余地を実際に生かせることは別です。

世界銀行は2025年2月の報告で、インドが2047年までに高所得国になる目標を達成するには、今後約22年間、平均7.8%の成長が必要と試算しました。これは将来の成長率の予測や達成の保証ではなく、目標に必要な条件を示すシナリオです。

報告では投資の拡大、雇用の創出、女性の労働参加、生産性の向上などを重視しています。若い人口が多くても、十分な仕事や技能がなければ、そのまま経済の強みにはなりません。

成長への期待 確認したい課題
大きな国内消費市場 所得が幅広い層で増え、購買力が伸びるか
若い労働力 教育・職業訓練と雇用機会が整うか
製造業・インフラの拡大余地 投資と制度整備が継続するか
IT・サービス産業 競争や技術変化の中でも利益を増やせるか

私は、インド経済には成長の可能性があると考えます。ただ、投資家としては「人口が多いから大丈夫」で止まらず、その成長が企業の利益と株主の利益につながるかまで確認したいところです。

BRICS投資は失敗だった?国と期間で結果は違う

BRICSは、もともとのブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカから拡大し、現在はインドネシアなども参加する枠組みになっています。

ただし、BRICSは、各国の株式が同じように動くことを保証する仕組みではありません。 資源価格の影響、産業構造、政策、通貨、海外投資家への規制などが異なります。

値動きの大きさを示す例がブラジルです。MSCIブラジル指数は、2024年に約29.8%下落した後、2025年には約49.7%上昇しました。これは米ドル建て・配当税引後再投資の指数で、日本の投資信託の実績ではありません。

反対方向の例がロシアです。MSCIは2022年、ロシア株式市場の投資可能性に問題があるとして、新興国市場から独立市場へ分類を変更しました。現在のオルカンの対象指数にもロシアは含まれていません。

新興国投資では、株価が下がるリスクに加え、売買や資金回収そのものが制限されるリスクも考慮する必要があります。

また、現在のBRICS加盟国が、既存の「BRICS投信」にすべて含まれるとは限りません。商品名だけで判断せず、目論見書で対象国を確認しましょう。

インドやBRICSはオルカンに入っている?

インド、中国、ブラジル、南アフリカは、オルカンの投資対象に含まれています。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の連動対象であるMSCI ACWIについて、国の区分を整理すると次のとおりです。

国・地域 MSCI ACWIの対象か
インド、中国、ブラジル、南アフリカ 対象
ロシア 対象外
エジプト、UAE、サウジアラビア、インドネシア 対象
イラン、エチオピア 対象外
シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン 対象
ベトナム 対象外

※確認できた2026年9月末のMSCI公式資料に基づきます。指数の対象国は将来変更される場合があります。

オルカンは世界のすべての国を均等に買う商品ではありません。指数の基準を満たす先進国・新興国の株式を、浮動株調整後の時価総額などに基づいて保有します。

したがって、「インド専用ファンドは買わない」と「インド株を一切持たない」では意味が違います。オルカンを持っていれば、その一部としてインド株も保有していることになります。

今後も投資対象になる?私の見方

インドは今後も投資先の候補になると考えます。ただし、「次の主役だから必ず買うべき」とまでは考えていません。

見ておきたいのは、経済成長率だけでなく、企業の1株当たり利益、その利益に対して払う株価、為替、株主保護や市場へのアクセスです。

今後、企業利益が期待以上に伸びれば株価を支える可能性があります。一方、好調な成長が続いても、期待が高すぎたり通貨安が進んだりすれば、円で見た投資成果が伸び悩むこともあります。

東南アジアについても、地域全体を一括りにはできません。MSCIの分類ではシンガポールは先進国市場、インドネシアやタイなどは新興国市場です。発展の可能性は、国ごとの制度や産業、企業の競争力で考える方が投資判断につながります。

今後のインド株はどうなる?3つのシナリオ

株価の水準を確実に予想することはできませんが、何が起これば見通しが変わるのかは整理できます。以下は予測値ではなく、投資判断のための考え方です。

シナリオ 主な条件 投資への意味
上昇が続く 利益が期待以上に増え、原油・為替も落ち着く 成長期待を実績が裏付け、株価を支える可能性
経済は伸びても株価は停滞 利益は増えるが、PERの低下や通貨安が相殺する GDP成長率だけではリターンを判断できない
下落が続く 利益が期待に届かず、原油高や資金流出も続く 割安に見えても下落が長引く可能性

特に気をつけたいのは、下落したというだけで「安くなった」と判断しないことです。株価が下がっても、将来利益の見込みがそれ以上に下がれば、利益に対する価格はむしろ高くなっている場合があります。

反対に、株価が高値を更新していても、利益がそれ以上に伸びていれば、評価倍率が下がっていることもあります。「以前より値下がりしたか」と「今の利益に対して割安か」は別の話です。

オルカン保有者が、インド株を追加で買う必要はある?

オルカンを保有しているなら、インド株を追加購入することは必須ではありません。

インド専用ファンドを買い足すのは、まだ持っていない国への分散というより、すでに保有しているインドへの配分を増やす行為です。

インドの将来性を高く評価し、集中するリスクも受け入れるなら選択肢になります。ただ、「話題になっているから」「乗り遅れたくないから」だけで追加する必要はないと思います。

私はインド株やBRICSに特化した商品を積極的に買うつもりはありません。投資先を選ぶうえでは、成長の物語よりも、価格、費用、制度のリスク、保有を続けられるかを重視したいからです。

「その国が成長すると思う」ことと、「自分の資金を追加で投じたい」ことは別です。

将来の成長国を当てる方法もあれば、全世界株式を通じて幅広く保有する方法もあります。投資ブームに合わせて商品を増やす前に、今の保有資産で何に投資しているのかを確認することが大切です。

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