東京と名古屋を約40分、東京と大阪を約67分で結ぶとされるリニア中央新幹線。
夢の乗り物という印象がある一方、「結局いつ開業するのか」「料金はいくらになるのか」「東海道新幹線や飛行機はどうなるのか」は、まだ分かりにくい状況です。
この記事では、2026年9月19日時点の公式情報をもとに、リニア中央新幹線の計画と現在地を整理します。
結論:開業時期はまだ決まっていない
最初に結論を言うと、品川―名古屋間の具体的な開業時期は、2026年9月時点でも正式には決まっていません。
当初は2027年の開業を目指していましたが、静岡県内の南アルプストンネル工事に着手できなかったことなどから断念されました。現在、認可上の工事完了予定は「2027年以降」とされています。
JR東海は2025年10月に公表した資金計画で、計算上の仮定として「2035年開業」を置きました。しかし同社自身が、これは開業時期の見通しを示したものではないと明記しています。
つまり、「2035年開業が決定した」のではありません。現状では、2030年代半ばが一つの目安として意識されているものの、正式発表を待つ必要があります。
| 区間 | 当初の目標 | 2026年9月時点 |
|---|---|---|
| 品川―名古屋 | 2027年 | 具体的な開業年は未定 |
| 名古屋―新大阪 | 当初2045年、その後最大8年前倒しを想定 | 品川―名古屋の遅れもあり未定 |
大阪までの全線開業も、かつては財政投融資を活用して最速2037年を目指す考えが示されていました。しかし、先行する品川―名古屋間の開業時期が定まっていないため、2037年を確定した開業年として見ることはできません。
リニア中央新幹線はどのような計画なのか
リニア中央新幹線は、超電導磁石の力で車体を浮上させ、最高設計速度505kmで走る新しい新幹線です。
単に東京―名古屋―大阪を速く移動するだけではありません。東海道新幹線とは異なる内陸ルートを整備し、日本の大動脈を二重化することも大きな目的です。
東海道新幹線が大規模地震や設備更新で長期間使えなくなった場合でも、別ルートのリニアがあれば三大都市圏を結ぶ交通網を維持しやすくなります。
計画から工事までの流れ
- 1973年:中央新幹線の基本計画が決定
- 1997年:山梨リニア実験線で走行試験を開始
- 2011年:JR東海が営業主体・建設主体に指名され、整備計画が決定
- 2014年:品川―名古屋間の工事実施計画が認可され、建設工事が本格化
- 2024年:目標としていた2027年開業を断念
- 2026年:沿線各地で駅、トンネル、橋りょう、車両基地などの工事が進行
2026年3月末時点で、品川―名古屋間では契約済み工区の延長が約9割、用地取得率が約85%、発生土の活用先確定が約85%となっています。
一方、契約や用地取得が進んでいることと、全線が予定どおり完成することは別です。都市部の大深度地下トンネル、南アルプス、軟弱地盤、湧水、発生土の処理など、時間の読みにくい難工事が多く残っています。
現在の工事状況はどうなっている?
リニア工事は止まっているわけではありません。東京、神奈川、山梨、長野、岐阜、愛知の各地で工事が進み、2026年3月には最後まで未着工だった山梨県駅(仮称)でも起工式が行われました。
首都圏と中京圏では、地下40mより深い場所を通る大深度地下トンネルのシールド掘進が進められています。品川駅と名古屋駅も、既存の鉄道を運行しながら地下に巨大な駅を造る難工事です。
最大の焦点だった静岡工区では、環境保全や大井川の水資源をめぐる協議が進展し、2026年には工事用ヤードの準備が進みました。ただし、開業時期を左右する南アルプストンネル本体の掘削工程を含め、全体の工期を確定できる段階には至っていません。
さらに、岐阜県瑞浪市では井戸やため池の水位低下が確認され、対策が続いています。静岡工区だけが解決すれば、すぐ開業時期が確定するという単純な状況でもありません。
ルートと駅はどこ?
最初に開業する計画の品川―名古屋間は285.6kmです。東海道新幹線のように太平洋側を進むのではなく、神奈川県から山梨県、静岡県北部、長野県、岐阜県を通る内陸ルートとなります。
品川から新大阪まで全線開業した場合の距離は約438kmです。東海道新幹線の東京―新大阪間より短く、できるだけ直線に近いルートで三大都市圏を結びます。
| 駅 | 設置場所 | 既存交通との接続 | 駅の特徴 |
|---|---|---|---|
| 品川駅 | 東京都港区 | 東海道新幹線、JR各線、京急線 | 地下に設ける東京側の始発駅 |
| 神奈川県駅(仮称) | 相模原市緑区・橋本駅南口付近 | JR横浜線・相模線、京王相模原線 | 地下駅。多摩地域や横浜方面から利用しやすい |
| 山梨県駅(仮称) | 甲府市大津町 | 既存鉄道との直接接続なし | 高架駅。バス、車、スマートICとの連携が重要 |
| 長野県駅(仮称) | 飯田市上郷飯沼付近 | JR飯田線とは直接接続しない計画 | 高架駅。南信州・三遠南信地域の玄関口 |
| 岐阜県駅(仮称) | 中津川市千旦林・美乃坂本駅付近 | JR中央本線・美乃坂本駅 | 高架駅。近くに中部総合車両基地を整備 |
| 名古屋駅 | 名古屋市 | 東海道新幹線、JR・名鉄・近鉄・地下鉄 | 既存駅の地下に設ける当面の終着駅 |
神奈川、山梨、長野、岐阜の駅名は、いずれも現時点では仮称です。開業が近づけば、地名を使った正式名称が決められると考えられます。
なぜ山の中を通るルートなのか
リニアは最高速度500km級で走るため、急なカーブを避ける必要があります。既存の鉄道や道路に沿って曲がりながら進むのではなく、山を長いトンネルで貫き、できるだけ直線に近いルートを取ります。
品川を出た列車は首都圏の地下を西へ進み、相模原市の橋本付近から山梨県へ向かいます。山梨県内では、現在走行試験に使われている山梨リニア実験線の一部が、将来そのまま営業線に組み込まれます。
甲府盆地を通過した後は南アルプスをトンネルで抜け、長野県の伊那谷へ入ります。さらに伊那山地を越えて岐阜県中津川市を通り、中京圏の地下へ入り名古屋駅に到達します。
品川―名古屋間の約86%がトンネルです。東京・名古屋の都市部だけでなく、山梨・静岡・長野の山岳地帯も長いトンネルで通過するため、東海道新幹線のように富士山や海の車窓を楽しむ列車にはなりません。
品川駅|東京駅ではなく品川が始発
東京側の始発駅は東京駅ではなく品川駅です。東海道新幹線、山手線、京浜東北線、東海道線、横須賀線などが集まり、京急線で羽田空港方面にも移動できます。
リニアの駅は、現在の品川駅の地下深くに南北方向で建設されています。既存の東海道新幹線や在来線を運行しながら地下を掘るため、リニア工事の中でも特に難しい区間です。
東京駅や新宿駅から来る利用者には乗り換えが必要です。リニア自体は名古屋まで約40分でも、品川駅までの移動時間と地下ホームまで降りる時間を含めて考える必要があります。
神奈川県駅(仮称)|橋本が首都圏西部の玄関口に
神奈川県駅は、相模原市の橋本駅南口付近の地下に建設されています。リニアの駅から品川までは、計画上およそ10分の距離です。
橋本駅にはJR横浜線、JR相模線、京王相模原線が乗り入れています。新宿、多摩ニュータウン、八王子、町田、横浜方面からアクセスできるため、東京都心を経由せずにリニアへ乗れるのが大きな強みです。
一方、リニア駅の建設に合わせて橋本駅南口一帯の道路や駅前広場、まちづくりを進める必要があります。駅が完成するだけで便利になるのではなく、既存3路線からの乗り換え動線が使いやすいかどうかが重要です。
山梨県駅(仮称)|甲府駅から離れた郊外型の駅
山梨県駅は甲府市大津町に建設される高架駅です。甲府駅の隣や既存路線上ではなく、JR身延線の小井川駅からも離れているため、鉄道同士をそのまま乗り換える駅ではありません。
甲府駅方面へのバス、パーク・アンド・ライド用駐車場、中央自動車道の(仮称)甲府中央スマートICなどを組み合わせ、山梨県全体から利用者を集める構想です。品川まで約25分、名古屋まで約45分とされ、東京だけでなく名古屋も日帰り圏になります。
ただし、リニアを降りてから甲府中心部までさらに移動が必要です。短い乗車時間を生かせるかどうかは、開業後のバス本数や道路整備に左右されます。
長野県駅(仮称)|飯田・南信州の交通を変える駅
長野県駅は飯田市上郷飯沼付近に建設される高架駅です。長野市や松本市ではなく、県南部の飯田市に設けられます。
JR飯田線の飯田駅と一体になった駅ではないため、鉄道からの乗り換えよりも、路線バス、高速道路、自家用車によるアクセスが中心になると考えられます。中央自動車道や三遠南信自動車道との連携により、南信州だけでなく愛知県東部や静岡県西部まで利用圏を広げられるかが注目点です。
現在の飯田市は東京・名古屋のどちらへ行くにも時間がかかります。リニア開業後は品川まで約45分、名古屋まで約30分弱とされ、沿線中間駅の中でも時間短縮効果が特に大きい地域です。
岐阜県駅(仮称)|美乃坂本駅と接続できる中間駅
岐阜県駅は中津川市千旦林に建設され、JR中央本線の美乃坂本駅に近接します。山梨県駅や長野県駅と違い、既存鉄道との乗り換えが可能になる計画です。
名古屋まで約15分、品川まで約60分と想定されています。中津川市だけでなく、恵那市、下呂・東濃地域、木曽地域などの玄関口になる可能性があります。
近くにはリニア車両の整備や留置を行う中部総合車両基地も造られます。ただし、美乃坂本駅は現在の中津川駅ほど列車本数が多くないため、中央本線の増発やバス網、道路整備を含めた二次交通が課題です。
名古屋駅|開業第一段階の終着駅
名古屋駅は品川―名古屋間が先行開業した時点での終着駅です。現在の東海道新幹線や在来線の地下に、東西方向のリニア駅が造られています。
東海道・山陽新幹線、JR在来線、名鉄、近鉄、地下鉄などへ乗り換えられます。大阪延伸前は、リニアで名古屋まで来て東海道新幹線へ乗り継ぐ利用も考えられますが、乗り換え時間を含めると、東京―大阪では従来の「のぞみ」に乗り続ける方が分かりやすいケースもありそうです。
なぜ静岡県には駅がないのか
リニアは静岡県を通りますが、駅は設けられません。通過するのは静岡市葵区の最北部にある南アルプスの山岳地帯で、市街地から大きく離れています。
駅を造ってもアクセス道路や周辺の平地が乏しく、利用者を集めることが難しい場所です。そのため、静岡県内は南アルプストンネルで通過するだけとなります。
これが「静岡県にはメリットがないのに、大井川の水資源や南アルプスの自然環境には影響するのではないか」という県側の強い懸念につながり、長期間の協議が必要になった背景の一つです。
名古屋から新大阪までのルートは?
名古屋から先は三重県、奈良市付近を経由し、新大阪駅へ向かう計画です。東京―大阪を最短で結ぶことを重視するため、京都駅は経由しません。
三重県と奈良県にも中間駅を設ける方針ですが、品川―名古屋間のような詳細なルートや正式な駅位置は、まだ決定していません。三重県では亀山市周辺、奈良県では奈良市付近が有力候補として検討されていますが、現段階では構想と確定事項を分けて見る必要があります。
終点は大阪駅や難波駅ではなく新大阪駅です。東海道・山陽新幹線、JR在来線、Osaka Metro御堂筋線へ接続し、中国・九州方面への乗り継ぎ拠点として使うことが想定されています。
すべての列車が中間駅に停まるわけではない
具体的なダイヤ、列車名、停車駅、本数はまだ発表されていません。
品川―名古屋を約40分で走る最速列車は、中間駅を通過する列車を前提とした所要時間です。すべての列車が橋本、甲府、飯田、中津川に停車すれば40分では走れません。
実際の運行では、品川―名古屋をノンストップで結ぶ速達列車と、中間駅に停車する列車を組み合わせる可能性が高いでしょう。中間駅に1時間何本停車するかは、沿線地域の利便性や開発効果を大きく左右します。
所要時間はどれくらい短くなる?
| 区間 | リニアの想定 | 現在の東海道新幹線 |
|---|---|---|
| 品川―名古屋 | 最速約40分 | のぞみで約1時間30分 |
| 品川―新大阪 | 全線開業後、最速約67分 | のぞみで約2時間20分 |
品川―名古屋は約50分、品川―新大阪は1時間以上短縮される計算です。
ただし、これは駅から駅までの時間です。リニアのホームは地下深くに造られるため、地上からホームまでの移動や乗り換えには時間がかかります。それでも大阪まで約67分で結ばれれば、日帰り出張や都市間の行き来は大きく変わるでしょう。
料金はいくらになる?
リニアの運賃・料金は、まだ決まっていません。
JR東海は2025年の収支試算で、品川―名古屋間の価格を東海道新幹線「のぞみ」指定席に700円上乗せする前提を置きました。
ただし、これも開業後の正式価格ではありません。JR東海は、具体的な運賃・料金体系は開業が近づいた時点で決定するとしています。
建設費は、品川―名古屋間だけで当初想定の5.52兆円から、2021年に7.04兆円、2025年には11兆円へ膨らむ見通しとなりました。今後の物価や運賃制度次第では、「のぞみ+700円」という過去の目安より高くなる可能性もあります。
一方、あまりに高額にすると東海道新幹線から利用者が移らず、リニアを建設する意味が薄れます。したがって、飛行機のような大幅な変動運賃よりも、速達性に対して一定額を上乗せする価格設定が現実的だと考えられます。
リニアが開業したら東海道新幹線はどうなる?
リニアが開業しても、東海道新幹線がなくなる可能性は低いでしょう。両者は競合する一方、役割を分担する関係になります。
「のぞみ」の利用者はリニアへ移る
東京―名古屋、将来の東京―大阪を最短時間で移動したい利用者は、リニアへ移ると考えられます。特に時間を重視する出張客は、リニアを選びやすくなります。
「ひかり」「こだま」を増やせる可能性がある
現在の東海道新幹線は「のぞみ」が多く、途中駅を利用する人にとっては必ずしも便利とは限りません。「のぞみ」の利用者がリニアへ移れば、空いた線路容量を使って「ひかり」や「こだま」を増やす余地が生まれます。
静岡、浜松、豊橋など、リニア駅がない都市にとっては、東海道新幹線の利便性向上が開業効果となる可能性があります。
東海道新幹線は安さと使いやすさで残る
東海道新幹線には、東京駅から乗れる、停車駅が多い、車窓が見える、リニアより料金を抑えられる可能性がある、といった強みがあります。
京都にはリニア駅が設けられない計画のため、東京―京都では東海道新幹線が引き続き有力です。また、リニアの運休時には東海道新幹線が代替ルートとなり、逆の場合も同様です。二つの路線を持つこと自体が災害対策になります。
飛行機はどうなる?
品川―名古屋の開業だけであれば、国内航空への影響は限定的です。もともと東京―名古屋は新幹線が圧倒的に便利で、航空便は多くありません。
大きな影響が出るのは、リニアが新大阪まで開業したときです。品川―新大阪が約67分になれば、保安検査や空港までの移動時間が必要な飛行機に対し、リニアがさらに優位になります。
特に羽田―伊丹線では、東京・大阪の中心部を行き来する利用者がリニアへ移り、便数や使用機材が見直される可能性があります。
ただし、飛行機がなくなるとは考えにくいでしょう。
- 羽田から国内線・国際線へ乗り継ぐ利用者
- 伊丹空港や関西空港に近い地域へ向かう利用者
- 航空会社のマイルや上級会員サービスを重視する人
- セール運賃で安く移動したい人
- 鉄道の運休時に別ルートを必要とする人
こうした需要は残ります。航空会社にとっては、東京―大阪の便をすべて維持するより、一部の発着枠を札幌、福岡、沖縄、国際線など、鉄道と競合しにくい長距離路線へ振り向ける選択肢も出てきます。
リニアは本当に必要なのか
リニアには、東京―名古屋―大阪を短時間で結び、東海道新幹線と合わせて大動脈を二重化する大きなメリットがあります。
一方で、品川―名古屋間だけでも総工事費は11兆円に増える見通しです。環境への影響、地下深くからの避難方法、将来の人口減少、建設費の回収など、開業後も検証すべき課題は残ります。
「速いから必要」「高いから不要」という単純な話ではありません。速達性だけでなく、災害時の代替ルートとしてどれほど価値があるのか、建設費に見合う需要を確保できるのかが重要です。
まとめ
- 品川―名古屋の2027年開業は断念され、具体的な開業年はまだ未定
- 2035年はJR東海の収支試算上の仮定であり、正式な開業予定ではない
- 品川―名古屋は約40分、全線開業後の品川―新大阪は約67分を想定
- 料金は未定。収支試算では「のぞみ指定席+700円」を仮置き
- 東海道新幹線は廃止されず、リニアとの役割分担が進む見込み
- 大阪まで開業すれば羽田―伊丹線を中心に航空需要への影響が大きい
2026年現在、リニアは各地で工事が進む一方、開業時期を断言できる段階ではありません。今後は、南アルプストンネルなどの難工事がどこまで順調に進むか、そしてJR東海が新たな開業見通しをいつ示すかが最大の注目点です。



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