LCCを利用するとき、「預けると料金がかかるから、荷物はキャリーケースにまとめて機内へ持ち込む」という人も多いのではないでしょうか。
ところが、オーストラリアのジェットスター航空は、頭上の収納棚に入れる機内持込手荷物を有料化すると発表しました。
無料で持ち込めるのは、前の座席の下に収まる小さなバッグだけ。一般的なキャリーケースを持ち込む場合は、追加料金が必要になります。
日本―オーストラリア線も対象になるため、日本人旅行者にとっても無関係ではありません。
なぜジェットスターはこの制度を導入するのでしょうか。開始時期や料金、利用者への影響、オーストラリアでの反応、日本のLCCやJAL・ANAへの波及について考えてみます。
ジェットスターは何を変更するのか
ジェットスター航空は、2027年2月2日出発便から機内持込手荷物のルールを変更します。
現在は、キャリーケースなどの手荷物1個と、ハンドバッグなどの身の回り品1個を、合計7kgまで基本運賃で持ち込めます。
新制度では、すべての運賃に無料で含まれるのは、前の座席の下に収まる手荷物1個だけになります。
無料手荷物の最大サイズは40×30×20cmです。ハンドバッグやノートパソコン用バッグ、小型のリュックなどが想定されています。
キャリーケースや大きなリュックを頭上の収納棚に入れたい場合は、「Priority Carry-on」という有料オプションを購入しなければなりません。
| 項目 | 2027年2月2日以降のルール |
|---|---|
| 無料で持ち込める荷物 | 座席下に収まる手荷物1個 |
| 無料手荷物の最大サイズ | 40×30×20cm |
| 頭上の棚に入れる荷物 | 原則有料 |
| 頭上に入れる荷物の最大サイズ | 56×36×23cm |
| 1個当たりの重量上限 | 10kg |
| 頭上に荷物を持ち込む方法 | Priority Carry-onを購入 |
| 受託手荷物 | 従来どおり最大40kgまで有料で購入可能 |
Priority Carry-onには、頭上の棚に入れる手荷物に加えて、優先搭乗も含まれます。
ただし、販売数には限りがあります。売り切れた場合は購入できず、受託手荷物として預けなければならない可能性があります。
いつから、どの便が対象になる?
新制度が始まるのは、2027年2月2日です。
対象となるのは、オーストラリアのジェットスター航空が運航する「JQ便」です。
オーストラリア国内線だけでなく、成田―ケアンズ線などの国際線にも適用されます。日本発着便を利用する場合も注意が必要です。
一方、日本国内線などを運航するジェットスター・ジャパンの「GK便」は、今回の変更の対象外です。
GK便では、現時点で従来どおり2個・合計7kgまでの機内持込手荷物が基本運賃に含まれます。
同じジェットスターという名前でも、JQ便とGK便でルールが異なることになります。
特に、GK便からJQ便へ乗り継ぐ旅程では注意が必要です。国内区間では無料で持ち込めたキャリーケースが、オーストラリア線では有料になる可能性があります。
なお、2026年8月5日より前に予約した、2027年2月2日以降出発の対象便については、Priority Carry-onが追加料金なしで付与されます。
すでに追加の機内持込手荷物を購入していた場合は、その料金が返金される予定です。
頭上の収納棚を使うといくらかかる?
Priority Carry-onの料金は一律ではなく、路線や便、需要などによって変わります。
ジェットスターが公表している片道料金の例は次のとおりです。
| 路線 | 片道料金 |
|---|---|
| ローンセストン―シドニー | 25豪ドルから |
| アデレード―ブリスベン | 26豪ドルから |
| シドニー―メルボルン | 33豪ドルから |
| パース―バリ | 39豪ドルから |
| ケアンズ―東京(成田) | 52豪ドルから |
成田―ケアンズ線では片道52豪ドルからなので、往復では最低104豪ドル程度です。
為替によって変わりますが、日本円ではおおむね1万円前後の追加負担になります。
しかも、表示されているのは「最低料金」です。予約時期や混雑状況によっては、さらに高くなる可能性があります。
家族旅行では負担がより大きくなります。
仮に家族4人が全員、成田―ケアンズ往復でPriority Carry-onを追加すると、最低でも合計416豪ドル。日本円では4万円前後になる計算です。
航空券の最安運賃だけを見て予約すると、手荷物を追加した段階で想定以上に高くなるかもしれません。
なぜジェットスターは有料化するのか
ジェットスターは今回の変更について、利用者や乗務員から寄せられた意見をもとに、搭乗時のストレスを減らすためだと説明しています。
現在の7kg制限では、搭乗口で手荷物の重量を量られることがあります。
わずかに超過して追加料金を求められるケースもあり、利用者にも空港スタッフにも負担になっていました。
新制度では重量よりも個数とサイズを重視し、搭乗口で日常的に重量を量る運用を減らします。
ただし、重量制限が完全になくなるわけではなく、1個10kgまでです。
もう一つの理由が、頭上の収納棚の混雑です。
LCCでは受託手荷物が有料のため、できるだけ多くの荷物を機内へ持ち込もうとする人が増えます。
その結果、搭乗後に空いている棚を探したり、荷物を移動させたりする場面が発生し、出発が遅れる原因になります。
頭上の手荷物を有料・数量限定にすれば、機内へ持ち込まれるキャリーケースを減らし、搭乗時間を短縮できます。
ただし、航空会社の収益拡大という狙いもあるでしょう。
LCCは座席運賃を低く見せながら、
- 座席指定
- 受託手荷物
- 機内食
- 優先搭乗
などを別料金にすることで収益を確保しています。
今回、機内持込手荷物も有料オプションに加わります。
荷物を持ち込む人から追加収入を得られ、持ち込む人が減れば定時運航につながるため、航空会社にとっては合理的な制度です。
利用者にはどのような影響がある?
荷物が少ない人にとっては、必ずしも悪い変更とは限りません。
小さなリュックやハンドバッグだけで移動できる人は追加料金がかかりません。頭上の棚が混雑しにくくなり、搭乗や降機が早くなる可能性もあります。
また、7kgを少し超えていないか搭乗口で心配する必要も少なくなります。
一方、一般的なキャリーケースを持って旅行する人にとっては、実質的な値上げです。
特に影響が大きいのは、次のような利用者です。
- 数泊分の荷物をキャリーケースに入れる人
- ロストバゲージを避けるため荷物を預けたくない人
- 荷物の受け取り時間を短縮したい人
- 日本―オーストラリアを往復する人
- 家族で旅行する人
- 帰国時にお土産が増える人
さらに、空港でバッグが座席下に収まらないと判断された場合、Priority Carry-onが売り切れていれば、受託手荷物として預ける必要があります。
空港での追加料金は事前購入より高くなる可能性があるため、予約時の確認が重要です。
気になるのは、手荷物を有料化した分だけ基本運賃が安くなるのか、という点です。
ジェットスターは「必要なサービスだけを選び、低運賃を維持する」と説明しています。
しかし、基本運賃が現在より確実に下がると約束されているわけではありません。
そのため、これまでキャリーケースを無料で持ち込んでいた利用者から見れば、やはり値上げと受け止めるのが自然でしょう。
オーストラリアではどう受け止められている?
オーストラリアでは、否定的な反応が目立ちます。
現地メディアが5,000人以上を対象に実施したオンライン投票では、約80%が今回の変更に否定的だったと報じられました。
「搭乗をスムーズにするためではなく、単なる追加料金ではないか」「航空会社の金もうけに見える」といった声も出ています。
オーストラリアでは、カンタス・ジェットスター陣営とヴァージン・オーストラリアの存在感が大きく、航空会社の選択肢が限られているという不満があります。
そのため、利用者が不満を持っても別の会社を選びにくいことが、批判を強めている面もあります。
一方で、肯定的な意見もあります。
- 搭乗口で手荷物を量られなくなるのはよい
- 頭上の収納棚が混雑しにくくなる
- 荷物の少ない人が余計な費用を負担しない仕組みは合理的
オーストラリア政府は有料化そのものを禁止する姿勢ではありませんが、予約時に追加料金を明確に示し、最終的な支払額を分かりやすくするよう航空会社に求めています。
日本のLCCにも有料化は広がるのか
現時点で、Peachは身の回り品を含む2個・合計7kgまで、ZIPAIRも2個・合計7kgまでの機内持込手荷物を無料としています。
今回のジェットスター航空のように、座席下の小型バッグ以外を有料にする制度は、日本ではまだ一般的ではありません。
短期的には、日本のLCCが一斉に追随する可能性はそれほど高くないと思います。
日本では「LCCでも7kgまでの機内持込手荷物は無料」という認識が定着しています。
1社だけが有料化すれば、「表示運賃は安くても最終的には高い」と敬遠される可能性があるからです。
ただし、ジェットスターの新制度が大きな混乱なく定着し、収益や定時運航の改善につながれば、日本のLCCが検討する可能性はあります。
全面的に有料化するのではなく、
- 最安運賃は座席下のバッグだけ無料
- 上位運賃には従来どおり7kgを含める
- 優先搭乗と頭上の手荷物をセットで販売する
といった形で、運賃タイプごとの差を広げることは考えられます。
JALやANAなどFSCへの波及は?
JALやANAが近いうちに、国内線の頭上の収納棚を単独で有料化する可能性は低いでしょう。
FSCは、手荷物や一定のサービスを運賃に含めることでLCCとの差を出しています。
機内持込手荷物まで有料にすれば、「それならLCCでよい」と思われかねません。
ただし、まったく影響がないとは限りません。
今後は、
- 最安運賃に含まれるサービスを減らす
- 国際線の安い運賃で受託手荷物を別料金にする
- 優先搭乗などを上位運賃の特典にする
- 機内持込手荷物の個数やサイズ確認を厳格化する
といった形で、運賃ごとのサービス格差が広がる可能性があります。
FSCがすぐに頭上の棚を有料化するというより、航空業界全体で「安い運賃には最低限のサービスだけを含める」という流れが強まるかもしれません。
まとめ
ジェットスター航空の新制度は、搭乗口での重量確認や頭上の収納棚の混雑を減らすという点では、一定の合理性があります。
しかし、これまで無料だった一般的なキャリーケースの持ち込みが有料になる以上、多くの利用者にとっては実質的な値上げです。
特に日本―オーストラリア線では、往復で1万円前後、家族旅行なら数万円の追加負担になる可能性があります。
今後、LCCの航空券を比較するときは、最初に表示される運賃だけで判断できません。
座席指定、機内持込手荷物、受託手荷物など、必要なオプションをすべて加えた「最終的な支払額」で比較することが、これまで以上に重要になります。
今回の変更は、現時点ではジェットスター航空のJQ便に限られ、ジェットスター・ジャパンのGK便は対象外です。
ただし、新制度が成功すれば、世界のLCCだけでなく、日本の航空会社にも影響を与える可能性があります。
「頭上の収納棚は無料で使える」という、これまでの常識が変わるきっかけになるのか。今後の各社の動きが注目されます。


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