資産形成を始めると、一度はこんな疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。
- 同年代の人はどれくらい資産を持っているのか
- 自分の資産は多いのか、少ないのか
- 将来に向けて、どれくらいあれば安心なのか
SNSでは「資産3,000万円達成」「1億円突破」といった投稿も見かけます。
しかし、SNSで目立つのは資産形成に成功した一部の人です。また、個人の資産額と世帯全体の資産額が混在していることもあり、そのまま自分と比較するのは難しいでしょう。
自分の現在地を知るためには、平均だけでなく中央値も確認し、単身世帯と二人以上世帯を分けて考えることが大切です。
この記事では、J-FLECの2025年調査をもとに、年代別の金融資産の平均・中央値、NRIの資産ピラミッド、資産目標の考え方、年代別の資産形成のポイントを紹介します。
年代別の金融資産額|平均と中央値
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、年代別の金融資産保有額は次のとおりです。
| 年代 | 単身世帯・平均 | 単身世帯・中央値 | 二人以上世帯・平均 | 二人以上世帯・中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 20代 | 255万円 | 37万円 | 525万円 | 125万円 |
| 30代 | 501万円 | 100万円 | 1,096万円 | 311万円 |
| 40代 | 859万円 | 100万円 | 1,486万円 | 500万円 |
| 50代 | 999万円 | 120万円 | 1,908万円 | 700万円 |
| 60代 | 1,364万円 | 300万円 | 2,683万円 | 1,400万円 |
| 70代 | 1,489万円 | 500万円 | 2,416万円 | 1,178万円 |
※金融資産を保有していない世帯を含む
※二人以上世帯は世帯主の年齢で分類
※金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」より
出典:J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
ここでいう金融資産には、次のようなものが含まれます。
- 預貯金
- 株式
- 投資信託
- 債券
- 積立型保険
- 個人年金保険
- 財形貯蓄
ただし、日常的な支払いや引き落としのために普通預金に置いているお金は含まれません。「運用のため、または将来に備えて蓄えている部分」が調査の対象です。
また、自宅や土地などの不動産、自動車、貴金属なども金融資産には含まれません。
単身世帯と二人以上世帯では大きく異なる
年代別の金融資産を比較するときは、単身世帯と二人以上世帯を分けて見る必要があります。
例えば40代の中央値は、単身世帯では100万円、二人以上世帯では500万円です。
二人以上世帯には共働き世帯も含まれるため、単身世帯よりも世帯収入が多くなりやすい一方、住宅費や教育費などの支出が増えることもあります。
同じ40代でも、単身世帯と夫婦・子育て世帯では家計の構造が異なります。「40代の平均はいくら」という数字だけでなく、自分に近い世帯構成のデータを見ることが重要です。
平均より中央値を見るべき理由
年代別の表を見ると、「同年代の人は思っていたよりも金融資産を持っている」と感じるかもしれません。
しかし、平均値は一部の資産額が大きい世帯によって押し上げられます。
例えば、5世帯の金融資産が次の金額だったとします。
- 100万円
- 200万円
- 300万円
- 400万円
- 3億円
この場合、平均は6,200万円ですが、中央値は300万円です。
平均だけを見ると、多くの世帯が数千万円の金融資産を持っているように感じます。しかし実際には、5世帯のうち4世帯が400万円以下です。
中央値は、資産額を少ない順に並べたときに中央に位置する金額です。一部の高額資産保有世帯の影響を受けにくいため、同年代のおおよその状況を知るには平均より参考にしやすい数字です。
ただし、中央値も「その年代までに持っていなければならない金額」ではありません。あくまで調査対象となった世帯の中央に位置する数字です。
前年と数字が大きく違うこともある
J-FLECの調査結果は、毎年同じ金額になるわけではありません。
株価や為替などによって保有する金融資産の評価額が変わるほか、調査に回答した世帯の構成によっても平均や中央値は動きます。
そのため、前年より平均が大きく上がったからといって、すべての世帯の資産が同じように増えたとは限りません。
統計は自分の現在地を知る参考にはなりますが、単年の数字だけで「自分は遅れている」「十分に資産を持っている」と判断しない方がよいでしょう。
資産ピラミッドと純金融資産
野村総合研究所(NRI)は、日本の世帯を純金融資産保有額によって5つに分類しています。
| 区分 | 純金融資産保有額 |
|---|---|
| マス層 | 3,000万円未満 |
| アッパーマス層 | 3,000万円以上5,000万円未満 |
| 準富裕層 | 5,000万円以上1億円未満 |
| 富裕層 | 1億円以上5億円未満 |
| 超富裕層 | 5億円以上 |
これは年齢による分類ではありません。
30代でも純金融資産が5,000万円以上あれば準富裕層に該当し、60代でも3,000万円未満であればマス層に分類されます。
NRIが2025年2月に発表した2023年推計では、富裕層と超富裕層を合わせた世帯数は165万3,000世帯でした。
出典:野村総合研究所「日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯」
純金融資産は負債を差し引いて計算する
資産ピラミッドで使われるのは「金融資産」ではなく「純金融資産」です。
純金融資産は、次のように計算します。
純金融資産=金融資産-負債
例えば、預貯金や株式、投資信託などの金融資産が6,000万円あり、住宅ローンが3,000万円残っている場合、純金融資産は3,000万円です。
この場合、NRIの分類ではアッパーマス層になります。
注意したいのは、自宅の時価がNRIの純金融資産には含まれないことです。
自宅に5,000万円の価値があったとしても、その金額を金融資産に加えて計算するわけではありません。自宅を含めた家計全体の純資産と、NRIが分類に使用している純金融資産は別の指標です。
J-FLECとNRIの数字は直接比較できない
この記事で紹介している2つのデータは、計算方法が異なります。
| データ | 使用する金額 | 負債 |
|---|---|---|
| J-FLECの年代別調査 | 金融資産保有額 | 差し引かない |
| NRIの資産ピラミッド | 純金融資産保有額 | 差し引く |
そのため、J-FLECの年代別平均が3,000万円を超えていたとしても、その世帯が必ずNRIのアッパーマス層に該当するとは限りません。
住宅ローンなどの負債があれば、純金融資産は金融資産保有額よりも少なくなります。
同じ「資産」という言葉でも、金融資産、純金融資産、不動産を含めた純資産では意味が異なるため、比較するときは何を含む数字なのか確認する必要があります。
年代別の資産目標は一律に決められない
「40代なら2,000万円」「50代なら5,000万円」といった年代別の資産目標を目にすることがあります。
しかし、本当に必要な資産額は年齢だけでは決まりません。
- 単身か、家族がいるか
- 持ち家か、賃貸か
- 住宅ローンがどれくらい残っているか
- 子どもの教育費が必要か
- 退職後に毎月いくら使いたいか
- 何歳まで働く予定か
- 退職金や年金をどれくらい受け取れるか
こうした条件によって、必要な金額は大きく変わります。
特に退職後に必要な資産は、次の考え方でおおよその金額を計算できます。
(退職後の年間支出-年金などの年間収入)×想定年数+まとまった支出-退職金
まとまった支出には、自宅の修繕費、医療・介護費、車の買い替え、旅行などが考えられます。
年代別の平均や中央値を超えることを目標にするのではなく、自分の収入と支出、将来の生活から必要額を逆算する方が実用的です。
年代別に考える資産形成のポイント
20代|まずは資産形成の土台を作る
20代の大きな強みは、長い運用期間を確保できることです。
まずは急な出費や失業などに備える生活防衛資金を確保し、そのうえで無理のない金額から積立投資を始めます。
- 毎月の収支を把握する
- 生活費の数カ月分を現金で確保する
- NISAを活用する
- 低コストで幅広く分散された投資信託を検討する
- 収入を増やすための自己投資も行う
全世界株式やS&P500などのインデックスファンドは、長期・積立投資の選択肢になります。ただし、投資に回しすぎて生活資金が不足しないように注意が必要です。
30代|大きな支出と積立を両立する
30代は、結婚、住宅購入、子育てなど、大きな支出が発生する人も多い年代です。
数年以内に使う予定のあるお金まで株式などで運用すると、必要なときに相場が下落している可能性があります。
住宅購入の頭金や教育費など、使う時期が近いお金は現金で確保し、長期間使わないお金を投資に回すことが大切です。
支出が増えて積立額を減らすことになっても、家計に無理がない範囲で続けられる仕組みを残しておくことが、その後の資産形成につながります。
40代|増える金額だけでなく減る金額も大きくなる
40代になると、それまで積み立ててきた資産がまとまった金額になる人も増えてきます。
資産額が大きくなると、相場上昇時には年間で数百万円増えることがある一方、下落時には同じくらい、あるいはそれ以上減ることもあります。
「もっと早く増やしたい」と考えて、個別株やレバレッジ商品などに資金を集中させると、それまで築いてきた資産を大きく減らす可能性があります。
資産額が増えたときほど、投資先の分散、現金比率、今後使う予定のあるお金を確認することが重要です。
50代|退職後の生活を具体的に考える
50代は、老後を漠然と心配するのではなく、退職後の収入と支出を具体的に計算し始めたい時期です。
- 退職金の見込み額
- 公的年金の受給見込み額
- 住宅ローンの残高
- 退職後の年間生活費
- 何歳まで働くか
- 退職後に実現したいこと
これらを整理すると、退職までに準備したい金額が見えてきます。
年齢だけを理由に一律に債券を増やす必要はありません。数年以内に使うお金を現金で確保したうえで、自分の支出予定とリスク許容度に合った資産配分を考えます。
60代以降|資産を使う計画も立てる
退職後は、資産を増やすことだけでなく、どのように取り崩すかも重要になります。
金融資産が十分にあっても、「減るのが怖い」と感じて使えなければ、長年資産形成を続けてきた意味が薄れてしまいます。
年金で生活費のどこまで賄えるのかを確認し、不足分を金融資産から計画的に取り崩します。
当面の生活費を現金で確保し、それ以外の資産は運用を続ける方法もあります。資産をすべて現金にするのではなく、使いながら残りの資産を運用するという考え方です。
資産形成で大切なのは続けられる仕組み
長期の資産形成では、相場の動きを正確に予想することより、無理なく続けられる仕組みを作ることが重要です。
- 収入の範囲内で生活する
- 給料日に自動で積み立てる
- 生活に必要なお金は現金で確保する
- 低コストの商品を選ぶ
- 特定の国や資産に集中しすぎない
- 相場が下落しても慌てて売らずに済む金額で投資する
毎年必ず資産が増えるとは限りません。
株価や為替の動きによって、一時的に前年より資産が減ることもあります。それでも、家計を安定させ、長期間積み立てを続けられる仕組みがあれば、資産形成を前へ進めることができます。
まとめ
年代別の平均や中央値は、自分の現在地を知るための参考になります。
ただし、単身世帯と二人以上世帯では金額が大きく異なり、平均値は一部の高額資産保有世帯によって押し上げられます。
また、J-FLECの金融資産保有額と、NRIの純金融資産保有額では計算方法も異なります。
統計を見るときは、次の点を確認することが大切です。
- 個人ではなく世帯単位の数字である
- 平均だけでなく中央値も確認する
- 金融資産に何が含まれているか確認する
- 負債を差し引いた金額か確認する
- 統計上の平均を自分の目標にしない
他人より多いか少ないかだけでなく、自分が望む生活にいくら必要なのか、そのための積立を続けられているかを確認する方が、将来の安心につながります。



コメント